2017/06/29

一般読者向けのチョーサーの入門書が欲しい

6月28日、昔働いていた学校でチョーサーについて1回だけゲスト講義をしたので、先週から、その時に配布するプリントなどを作っていた。その一部として、学生用の参考書リストを作っていたのだが、私の知る限りでは、長い間、日本語で読める手軽なチョーサーの入門書が出てない。新書では、桝井迪夫『チョーサーの世界』(岩波新書、1976)と斎藤勇『カンタベリ物語―中世人の滑稽・卑俗・悔悛 』(中公新書、1984)があるのみで、どちらも、古本では手に入るが、絶版。海老久人、朝倉文市訳のデレク・ブルーア先生の啓蒙書(『チョーサーの世界―詩人と歩く中世』[八坂書房、2010])はあるが、英米の読者に向けて書かれたものだし、翻訳では523頁もあるハードカバーで、値段も6200円以上。図書館で借りるにしても、一般の読者や学生には敷居が高く、私も持っていない。

専門書も、チョーサーの文学に関してまとまって書かれたものは、依然として、斎藤勇、河崎征俊両先生の数冊が主なもの。個別の問題を専門的に扱った論文集(例えばチョーサー研究会の本)などはあるが、学生のレポートや卒論に役立てるには、その学生がすでに授業や上記の入門書などで勉強している必要がある。シェイクスピアでは沢山あるような、一般読者のための総合的な解説書が望まれる。誰か書いてくれないかな。

もしかしたら、私が知らないだけで、一般読者向きの新しい入門書が出ているのかもしれないが・・・。もし適当な本が出てないのなら、個人で書かれても良いし、チョーサー学者はまだ結構いらっしゃるのだから、何人かで手分けして書かれても良いと思う。

2017/06/28

学会のSNSによる情報発信

私が会費を払っていて、イギリスに事務局を置く The Medieval English Drama Society からメールが来た。この学会に置かれている the social media committee つまりフェイスブックやツイッター等の担当の係では、学会にふさわしいイメージを募集しているので、何か適当なイメージ(例えば演劇や祝祭関連の写本画像など)があれば、推薦して欲しい、とのこと。担当者3人は大学院生と講師になったばかりの若い先生達。学会に関連のある情報をツッイターやフェイスブックで頻繁に発信してくれる。ツィッターは自分がアカウントを持ってなくても、インターネット接続が出来れば誰でも見られる。毎年春の学会の間は、その写真や発表の紹介もどんどん発信されて、イギリスに行けなくても、幾らかはその雰囲気が味わえる。中世イギリス演劇に関して、国内で情報交換する人がほとんどいない私にとっては、刺激になって大変ありがたい存在。また、どの学会に加入/出席しようか、と考えている人にとっても、学会のホームページ以上に、最新情報が沢山見られ、有益だ。イギリスにおいて以前より中世劇の研究が盛んになりつつあるように思うが、こうした活動により、院生や学部生にすそ野を広げているのも、発展の一因ではないか。

英米の学会では、ツィッター、ないしフェイスブックが、以前のメーリングリストの代わりをするようになってきている。勿論今でもSNSを使わない会員も沢山いるので、メーリングリストも必要だが、メールよりもより頻繁に更新され、かつ会員との双方向のコミュニケーションが計りやすいのが良い。日本でも若い学者を中心に個人のツィッター使用は大変多いが、個人としての日常生活のつぶやきが多くて学会のお知らせとは違うので、やはり学会単位でツィッターによる情報発信があると良いと思う。

The Medieval English Drama Society のツイッター:
https://twitter.com/MedEngTheatre

日本の中世英語・英文学関連では、「国際アーサー王学会日本支部」の公式ツィッターがある。西洋中世学会は、「西洋中世学会若手セミナー」というアカウントでのツィッターがある。

「国際アーサー王学会日本支部」
https://twitter.com/inter_arthur_jp

「西洋中世学会若手セミナー」
https://twitter.com/jsmes_wakate

2017/06/27

7月の「100分de名著」はジェイン・オースティン『高慢と偏見』

7月のETV「100分de名著」はジェイン・オースティンの『高慢と偏見』です。私はこのシリーズ、昔は時々見ていたのですが、最近は全く見てません。というのはずっとレギュラーで出ている所謂テレビ・タレント、伊集院光さんの、いささか押しつけがましい主観的な感想が鼻について嫌になったからです。でも7月のジェイン・オースティンの『高慢と偏見』は英文学の古典ですし、見たい気がするので、テキストだけは買ってきました。このシリーズ、テキストがとても良いです。適当な分量で古典の概要と主要な論点がわかりやすく解説してあり、いわば雑誌形式の岩波新書。普通の雑誌と異なり、NHKの案内以外には余計な広告もなく、かさばりません。値段も500円ちょっとで、気軽に買えます。今回の解説者は近代小説の権威、京都大学の廣瀬由美子先生です。テキストは、廣瀬先生だけが執筆していて、他の余計な文章はありません。

私は英文学関係で、河合祥一郎先生の『ハムレット』、そして同じく廣瀬先生の『フランケンシュタイン』のテキストを買いました。

それにしても、昨今のNHKの教育や報道番組は、どれもこれも民放のように素人の芸人や俳優を出すのは困ったものです。別に、伊集院さんが嫌いというわけではありません。ただ、文化や教育、報道などの番組には、その番組の内容に適した人材を出してくれるだけで十分なんだけど。俳優さんなどでも、例えばシェイクスピアの回にハムレットを演じた役者が出演するなど、番組の主題に詳しい人なら意味があるとは思いますが。テーマは面白くても、見るのが本当に嫌になります。

番組のホームページ:
http://www.nhk.or.jp/meicho/