2018/08/12

"Julie" (Lyttelton, National Theatre, 2018.7.22)

"Julie" (Lyttelton, National Theatre, 2018.7.22)

National Theatre 公演
観劇日:2018.7.22 7:30-8:45
劇場:Lyttelton, National Theatre

演出:Carrie Cracknell
脚本:Polly Stenham, based on "Miss Julie" by August Strindberg
デザイン:Tom Scutt
照明:Guy Hoare
音響:Christopher Shutt
音楽:Stuart Earl

出演:
Vanessa Kirby (Julie)
Eric Kofi Abrefa (Jean)
Thalissa Teixeira (Kristina)

☆☆☆ / 5

スウェーデンの劇作家August Strindberg (1849-1912)による1888年の古典、"Miss Julie"、をベースにして、現代イギリスの劇作家Polly Stenhamが舞台を今のロンドンに置き換えた新作。主人公のJulieは金持ちの娘で30歳位。親の立派な屋敷に住み、親の金で養われており、執事のJeanやメイドのKristinaなどの使用人を使っている。Jeanは黒人俳優、Kristinaはアジア系俳優が演じることにより、自然とStrindbergの原作にはないひねりが入った。Julieは特に目的も野心もなく、酒と麻薬と空疎なパーティーに溺れて暮らしている。一方、使用人2人はそれぞれ地道な努力を重ね、今の仕事を踏み台にして、新しい仕事、新しい人生見つけようと夢見ている。原作には元々進化論の影響が濃いそうで、労働者階級が、退廃した暮らしに溺れるブルジョアを乗り越えていく様子を描いているのだが、それは19世紀末だけでなく、現代にも上手く当てはめられている。

但、何だかそれだけの劇で、それ以上の政治的なメッセージなどは窺えず、物足りなかった。時間も1時間15分程度で短すぎる。Strindbergの原作は、北欧の短い夏を楽しむ享楽的な感覚と傾きつつあるブルジョアの退廃が、独特の雰囲気をかもし出し、チェーホフ的な味わいが魅力だと思ったのだが、このバージョンはそれに代わる魅力を付け加えることが出来てない。一方で良かったのは、2人の主演者、Vanessa KirbyとEric Kofi Abrefaの演技。彼らの説得力あるやり取りを見るだけで、あっという間に短すぎる上演時間が過ぎた。

こうしてみると、今回のロンドン滞在中3本の劇を見たけど、私の劇の内容に関する好みもあるが、3本とも女性演出家による。演出家に女性が増えている事は、イギリスの演劇界において女性の地位が高まっていることを示しているのではないだろうか。

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