2009/11/27

詩人ジョン・キーツの恋と死  "Bright Star" (映画, 2009)

詩人キーツの恋と死
"Bright Star" (2009)

☆☆☆☆☆/5

Director: Jane Campion
Screenplay: Jane Campion
Costume: Janet Patterson
Music: Mark Bradshaw
Director of Photography: Greig Fraser

出演:
Ben Winshaw (John Keats)
Abbie Cornish (Frances 'Fanny' Brawne)
Paul Schneider (Charles Brown, Keats' close friend)
Kerry Fox (Mrs Brawne, Fanny's mother)

映画館で映画を見るのは本当に久しぶり。この前はいつ見たか思い出せない。この映画は今年の公開。カンヌでも上映された。新聞やテレビのニュース・ショーなどで紹介されていて、関心を持ち、見てみたいと思っていたが、ロンドンに用事があったので、その帰りに見た。

John Keats (1795-1821)の死の前の2年くらい、その間にあった彼と隣人のFrrances "Fanny" Brawneとの恋愛を大変落ち着いたタッチで描く。詩人Andrew Motionのキーツの伝記に触発されて、作られたとのことだ。特に大きな事件が起こるわけではない。従って、Keatsや彼の詩にまったく関心を持っていなくて、ただの恋愛ドラマを見に来た人はとても退屈に思うかも知れない。Keatsが住んでいたロンドン郊外のハムステッドの村の日常的な暮らしが坦々と描かれ、その生活の中で二人の愛が静かに成長してゆく。しかし愛が膨らむのと反比例するかのように、Keatsの結核は悪化。友人達の助力により、イタリアに転地療養するが、その地で客死する。結末は非常に悲しい。

Kestsは大変貧しかったので、母親からは結婚は難しい、と言われる。また、Keatsと同居している親友のCharles Brownは彼の保護者のような存在だが、KeatsとFannyの仲が深まっていくことに嫉妬を感じているようにも見える。そうした障害はあったが、しかしそうした世間的なことが大きな問題に発展する前に、詩人の命が尽きてしまった。

素晴らしく美しい画面。19世紀初めであるが、Jane Austinドラマで感じるような、コスチューム・ドラマの作りもの臭さがほとんど感じられず、今起こっていることのようにリアルに映った。Keatsが大変貧しいことも一因だろう。主演のBen WinshowとFannyを演じたAbbie Cornishが自然で、それ程美男美女として描かれてないのもとても良い。室内のシーンはフェルメールの絵画を見ているような感じの時もあり、外の景色はコンスタブルの作品のようでもある。移り変わる自然、花や昆虫と戯れる2人が美しい。そしてKeatsの健康をむしばんだ冬の冷たい雨や雪も、厳しい自然の美しさを見せてくれる。また、2人のまわりで遊んだり楽器を弾いたりしているFannyの妹と弟が可愛らしい。自然や家族が2人の心と共振して、静かな音楽を奏で続ける映画。Fannyはとてもお洒落な女性で、着ている服が大変素敵。また庶民の服なので、今でもそのまま着られそうな服ばかり。新聞のファッション記事でもこの映画が取り上げられていた。

随所にKeatsの詩が挿入されるが、残念ながら私のリスニング力では聞いただけでは味わえず、悔しい。DVDが出たら是非買って、繰り返し見たい作品。帰ってからKeatsの詩を読んで、記憶の中でも映画を味わっている。映画のサイトは:
http://www.brightstar-movie.com/

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