2014/01/19

無料のオンライン大学講座(MOOC)

2、3年前、MOOCと略される大学の無料オンライン講座 (Massive Open Online Courses) を知り、凄い時代になったな、と思ったが、今やあまねく知られることとなった。今日1月19日の朝日新聞日曜版Globeの大学特集でも、議論の出発点として、冒頭の記事で取り上げている。オンラインで無料講座が配信され始めれば、莫大な授業料を払って従来の大学に入学する意味とは何か、当然問われざるを得ない。しかし、この現象はMOOCで突然始まったことではない。イギリスのOpen Universityとか、日本の放送大学などを始めとする放送メディアを使った安価な高等教育は既に定着しており、更に、オンライン講座で国内は勿論、世界の大学の学位が取れる環境もかなり整ってきている。特に人文社会分野では、かなり広く専門的な分野の勉強が出来る。しかし、MOOCの新しいところは、これらの講座が無料であることだ。

但、MOOCに加わっている大学も何の目的もなく無料にしているわけではないだろう。これらのオンライン授業を入り口にして、自分の大学に世界中の優秀な学生を引きつけようとしていたり、志願者数を増やそうとしたり、大学の宣伝と考えていたりと、社会へのサービスであると共に何らかの功利的な動機はあるだろうと思う。

MOOCによって日本の一般的な大学が大きな影響を受けるだろうか。ある程度の影響はあるだろうが、脅威を感じるほどでは無い、と私は思う。現在の学部教育は、小学校以来の全人的な教育の最終段階という意味が非常に強い。例えかなり大人数でも、対面授業で教師と学生がお互いの顔を見、声を聞きつつ、同じ時間と空間を共有することで成り立っている面が大きい。これをオンラインで代替することは出来ないだろう。一方、大学院レベルの学位や授業、あるいは、学位を欲しい訳ではなく、特定の技能とか資格取得に特化した教育を受けたい社会人などにとっては、MOOCは大変便利だろう。但、そうした「おいしい」分野をまるごと無料で受講させるほど、大学もお人好しではないと思う。まずは、入門講座などを無料配信し、残りは有料講座でどうぞ、ということになるのでは? あるいは、講義を視聴するだけなら無料だが、練習問題やレポートの添削まで付くと有料、修了証や認定証を出すと更にエクストラの費用、といった具合になるかもしれない。あるいは、受講生から料金を取るのではなく、企業や公共機関をスポンサーとして、広く無料で教育を行うということも考えられる。例えば福祉関連の講座などでは、ボランティアや専門のケアワーカーとして地域に貢献できる人材を養成したい地方公共団体とのタイアップなど考えられる。

さて中世英文学でもMOOCはあり、一部利用したいと思わないでもないが(例えばこれ)、画面を1時間以上見ていると目が痛くなり頭痛もしてくる私としては、オンライン講座はフィジカルな面でダメだわ。オンラインでは、紙に皆印刷しない限り、興味深い中世関係のブログを読むくらいで精一杯。それも長めの英文ブログは印刷してから読んでいるくらいなんです。

0 件のコメント:

コメントを投稿