2015/03/27

NHK ハートネットTV、シリーズ「20代の自殺」 「生きるためのテレビ2」(全2夜)

NHK ETV、3月24日、25日の午後8時から放送された標記の番組を見た。

 日本では、若者の死因の第一位は自殺だそうである。去年からETVの福祉番組、ハートネットTVでは何度か若者の自殺の問題を取り上げている。番組には1000通も反響のメールが寄せられているそうで、その中には、自分も自殺をしようとしたという人からのものも多いようだ。今回は2夜にわたり、自殺を考えたり、自傷行為を繰り返したりした若者自身が登場して、自分の経験を語った。日本の社会の息苦しさが良く分かる番組だった。番組での証言や紹介された例から、同性愛や性同一性障害、学習障害などを持つ子供・若者への差別が特に若者を苦しめていると感じられた。

自殺を考える多くの人が、自分は社会にとって「迷惑」なんだ、と思い込んでいた。つまり、話し相手や相談できる人がいない、共感を寄せてくれる人がいないのである。迷惑をかけてもいないのに、自分は社会に要らない人間と思い込み、自傷行為や自殺に至る。集団生活になじめず、暗い子だったりすると、子供の時は酷くいじめられる。大人になると、まったく友人、知人がいなくて孤立する。就職も難しく、就職してもまわりに溶け込めないうちに、つまはじきにされ、鬱病になったり、仕事に出られなくなったりする。それで思ったのだが、この国は、若者に「若者」らしさを期待しすぎるのではないか。明るさ、ポジティブ、生命力、若々しさ、等々を持った若者でないと、「若者」と認めてくれない。農業や職人の仕事、単純労働などが大変少なくなり、大多数が高学歴にもなって、オフィスで事務職をしたり、色々な営業活動に従事したりする今、ほとんどの人に、現在の高度企業社会に適した積極性、明るさ、自己表現能力、知的な器用さや俊敏さなどが求められる。これが内向的だったり、不器用だったり、多少の学習障害を背負い、急速な環境の変化についていけない人達を追い詰めている。逆に、不器用で地味な人柄だが、真面目にコツコツ努力するような人は評価されづらい世の中になってきたと思う。自殺や若者の悩みを越えて、今の日本の姿を考えさせる番組だった。

最近私はNHKのニュースがとても信用できず、ほとんど見なくなった。しかし、ウィークディ午後8時のこの福祉の時間だけは、ある意味、ニュース番組としても関心を持って視聴できる。貧困の問題、ジェンダーや性的少数者の差別の問題、孤独死など東北の被災地の問題、ギャンブル依存の問題など、日本社会の色々な問題が政治性を越えて、人間的な視点で取り上げられているから。

番組のウェッブ・ページ

2013年のものだが、ハートネットTVプロデューサーが語る番組の意義と気をつけていること。

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