2014/05/01

コンサート「ラウデージによる種の復活の黙想」(八王子復活教会、2014.4.28)

会場:聖公会 八王子復活教会
2014.4.29  15:00-16:00
合唱と演奏:ラウデージ東京
指揮と監修:杉本ゆり

中世英語英文学の研究者で、私の大学院の大先輩である先生からお知らせをいただき、始めてこの古楽グループのコンサートに出かけた。リーダーの杉本ゆりさんは、長年中世の音楽を研究され、教育、研究、そして今回のような実際の演奏において活躍されている方だそうである。丁度復活祭の期間中であり、曲目はキリストの復活にちなんだものが並んでいた。パンフレットの説明を一部引用すると、次の様な曲が含まれる:

“Concordi laetitiae”
「13世紀のフランス起源のラテン語プローザ。聖母マリアと共に主の復活を願う行列聖歌として伝統的に親しまれてきた。」 
“Victimae paschali laudes
「セクエンツィア(続唱)のなかでももっとも広く親しまれていた聖歌です。11世紀末の写本からの情報でウィポー(Wipo, c.990-c.1050)作とされています。このセクエンツィアは典型的なセクエンツィアの形を取らず、韻も踏まない不規則な詩形であることから、押韻のタイプに移行する過渡期の姿を示しています。このセクエンツィアは対話を加えながら復活物語を追い、典礼劇のプロトタイプを見せてくれます。このラテン聖歌ができてから1世紀後にドイツで、ラテン語の歌詞の間にドイツ語が挿入され、宗教改革前のドイツ語賛歌”Christ ist erstanden”となり、更にルターが両者に基づいて”Christ lag in Todesbanden”を書きました。」 
“Jesu Christo glorioso” (Cortona MS 91)
「13世紀の民衆の宗教運動の中から生まれた、特にフランシスコ会の中から生まれたラウダという俗語による賛歌がコルトナ市の聖フランチェスコ教会に残されていました。」 
“Col la madre del beato” (Banco rari 18)
「14世紀のフィレンツェの信徒会が残したラウダ写本に所収される復活ラウダです。」
「この一連の復活のテーマによる楽曲はどれも中世の復活典礼劇の要素を持ち、それらと関連しあっています。復活の朝のミサが始まる前、聖土曜日から復活の主日の間にこのような劇が演じられ、それらは”Quem queritis?”(誰を捜しているのか)と呼ばれます。もともとはラテン語による典礼劇でしたが13世紀から次第に俗語化していきます。誰にでも分かる、地元の話し言葉で演じられ、目で見て耳で聞いて具体的に復活の福音が分かるようになるために復活劇の役割は重要でした。そして最後に感謝の賛歌として古代キリスト教の聖人アンブロジウスによる”Te Deum”が歌われる慣わしでした。」 
“O Filii et filiae”
「復活の物語を福音書に沿って歌うこの賛歌は今日も教会の中で生き続け、歌われる民衆的な素朴な歌です。 
“Spiritu Sancto”
「コルトナ写本には聖霊についてのラウダが3曲あります。この曲は、導き手である聖霊を三位一体において讃えています。」

他にもあり、全部で10曲。

会場でいただいたパンフレットには色々と勉強になることが書いてある。これらの歌は典礼劇とも深い関係があるそうだ。あまり長文の引用をするのは気が引けるが、杉本さんの解説で更に印象に残る部分をもう一カ所引用:
復活祭は聖母マリアのみならず、女性たちが活躍します。その筆頭はマグダラのマリアです。プログラム前半の復活聖歌”Victimae paschali laudes”から復活ラウダの間、何度も歌のなかに聞かれる”Maria”という呼びかけはすべてマグダラのマリアに向けられたものです。復活の朝、香油を持って走ってきたマリアたちにキリストが現れ、鳴いているマグダラのマリアに声をかける感動的な場面、また天使によって「ここにはおられません、ガリラヤで待っておられます」と告げられる場面。「我に触るな」という有名な言葉を言われる場面、疑ったトマスが脇腹の傷に手を差し入れ、「我が神よ」と信仰告白をする場面、エマオへ向かう旅人に姿を現される場面、など劇的な美しい復活シーンが歌に散りばめられています。

素朴な歌であり、賛美歌ではあるが、俗語で書かれ、民衆的なものも含まれるせいか、厳かなばかりでなく、打楽器に合わせて歌われ、とても軽快で楽しい歌もあった。私の様な者から見ると、一種のフォークソングを聞くような感じで楽しめた。また、聖母マリア達がキリストの墓を訪れて復活を知るという内容の歌もあり、中世演劇、特にラテン典礼劇の萌芽となるような曲も含まれ、勉強の上でも刺激になり良かった。これらの歌の幾つかは、恐らく大聖堂や修道院の内外における行列(procession)の折に歌われたのであろう。一種の行進曲でもあり、行列という演劇にも通じるパフォーマンスの音楽でもあった。

コンサートの後、会場でお会いした大ベテランの先輩で著名な学者のA先生、そして彼女のお友達の先生と3人で、しばらく気楽なおしゃべりを楽しんで、良い一日となった。

ラウデージ東京のホームページ。次のコンサートは11月に催されるらしい。是非また聞きたい。関心のある方はグループのホームページに注意していて下さい。

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