2014/07/04

NHK ハートネットTV「シリーズ 施設で育った私」

NHK Eテレ、「ハートネットTV」、今週火〜木曜日(7月1〜3日)は「シリーズ、施設で育った私」だった(再放送は8〜10日午後1:05より)。

最近、テレビの定時ニュース番組をあまり見なくなった。首相と副首相、官房長官の顔を見たり声を聞いたりすると気が滅入るから(固有名詞を自分のブログに書きたくないほど)。と言うわけで、その代わりに必ず見るのが(というか、以前から良く見てはいたが)、Eテレの「ハートネットTV」。食事を食べたり作ったりする時間に重なるので、録画して見る時も多いし、再放送で繰り返し見ることも時々ある。福祉の番組だが、しばしば他のドキュメンタリーではかなわない現場密着のミクロの視点で、貧困や差別、障害者やマイノリティー、外国人などに関する諸問題を取り上げる。今日本のテレビで私が最も良い印象を持っている番組。又、老人になりつつある私自身にとっては、介護のテーマが取り上げられる時も大いに参考になる。司会の山田賢治キャスターの語り口も暖かく、また、ゲストの人選も、学問的な専門家、現場で仕事をしている施設職員やNGO管理者、そして関心を持っているタレントなどを上手く組み合わせて、親しみやすく、かつ実際的にする工夫が見える。

さて今回は、虐待や貧困、育児放棄などで、施設で成長することを強いられた若者の自立の難しさを追ったシリーズ。いつもながら、福祉や教育の谷間を照射する大変良いシリーズだった。親に捨てられたり死に別れたりして精神的にトラウマを抱える難しい子供達。しかし、法令上は18歳で大人と見なされ、児童養護施設などから放り出される。外の世界に出された彼らを待っているのは、ホームレス、空腹からの窃盗と刑務所行き、女性の場合の売春や風俗産業、といった救いようのない状態(もちろん、そうならない人も沢山いるだろうけど)。大学進学も難しく、また社会人になっても貧困にあえぐ。そもそも、ちゃんとした家庭の子でも、ほとんどは、18歳ですぐに国民健康保険に入るとか、光熱費を手配するとか、部屋を借りるとか、収支を考えて支出し、健康な食生活をするなど出来ないだろう。ましてこの子達は破壊的な家庭環境を経ているわけだから。

希望を持てる事例を中心に紹介しつつ、懸命に努力する現場の職員、NGO、地域の篤志家などの奮闘を追っている。こういう番組を見ると、地域の中小企業の良心的な経営者が、施設出身の子とか、精神障害者、犯罪歴のある人など、他で嫌がるような若者の雇用に大きな役割を果たしてくれているのをつくづく感じる。地方自治体も場所や問題によって、色々と施策を試みている。しかし、国をあげての取り組みのあまりに薄いことには愕然とする。今日も今日とて、首相肝いりの教育再生会議とかいうところで学校教育の枠組みを変える事を発表していたが、そんなことより、こういう風に社会の片隅で親に捨てられたりして苦しむ若者の為に、国家全体で一定のサービスを提供できるようにお金を使って欲しいと切に思った。軍備にお金をかけている余裕はない。

私は歳を取れば取るほど、保守もリベラルも天下国家を論じるエリート政治家・学者・財界人が信用出来なくなってきた。国の進む方向を考える人達は、勿論マクロの視点で社会を考えることが必要だが、その際まずは社会の底辺(他の適当な言葉が見つからず恐縮です)で日々の生活に格闘している人々、そういう人達を支えようとしている末端のNGOや公務員、施設の職員などの目線を併せ持って、政策と税金の使い道を考えて欲しいものだ。


0 件のコメント:

コメントを投稿