2014/08/28

"Henry IV, Part II" (The Royal Shakespeare Theatre, 2014.8.23)

名優を活かしたオーソドックスな演出で楽しめた

劇場:The Royal Shakespeare Theatre
2014.8.23  19:15-22:25 (含む, 1 interval)

脚本:William Shakespeare
演出:Gregory Doran
デザイン:Stephen Brimson Lewis
照明:Tim Mitchell
音楽:Paul Englishby
音響:Martin Slavin
衣装:Laura Hunt

配役:
King Henry IV: Jasper Britton
Prince Hal, Duke of Lancaster: Alex Hassel
Prince John, Lord of Lancaster: Elliot Barnes-Worrell
Duke of Gloucester, the king’s son: Leigh Quinn
Duke of Clarence, Gloucester’s son: Martin Bassindale
Earl of Westmorland: Youssef Kerkour
Earl of Warwick: Jonny Glynn
Earl of Northumberland, Henry Percy: Sean Chapman
Archbishop of York: Keith Osborn
Lord Hastings: Nicholas Gerard-Martin
Sir John Folstaff: Antony Sher
Mistress Quickly, tavern landlady: Paola Dionisotti
Bardolph: Joshua Richards
Doll Tearsheet: Mia Gwynne
Pistol: Antony Byrne
Justice Shallow: Oliver Ford-Davis
Justice Silence: Jim Hooper

この劇を見た日は、朝からあちこち動きまわった。午前中にはストラットフォード観光でこの日はHoly Trinity Churchをじっくり見た。午後は20年以上お付き合いのある老婦人とお食事とお茶、その後、また別の、妻が親しくしているイギリス人カップルにお会いして旧交を暖めた。充実した一日だったが、この劇を見る頃にはすっかり疲れ果てていて、劇の間中、うとうと・・・。もちろん目覚めていた間の方が長いけれど、残念ながらまともに鑑賞したとは言い難いので、☆はつけていません。

ほとんどは歴史的なセットとコスチュームによるオーセンティックな舞台作りで、Gregory Doranらしい公演。こういう奇をてらわない演出をするほうが、今のNTやRSCではかえって勇気がいるのではないか。Antony Sherを中心として、俳優の演技力と見事なアンサンブルで楽しませてくれる。Sherはやや年齢と哀愁を感じさせるFalstaff。大変スローな台詞回しと動きで、吉田剛太郎フォルスタッフとは対照的。そのSherといいコンビを見せるのが、Oliver Ford Davis演じる、これまた大ボケのJustice Shallow。ほとんど何も言わず、ぼーっとして座っているJustice Silenceとともに、楽しい老人トリオだった。SherとFord Davisは間の取り方が絶妙。たとえば『ゴドーを待ちながら』のMcKellenとStewartを思い出させる、年を取った俳優だけが出せる味わいがあった。また、イーストチープの酒場のシーンでは、Mistress Quicklyもかなり年配の配役で、Sherの役作りに合っていた。Pistolだけは、突拍子もないぶっ飛びぶりではあった。

この二人の治安判事が出てきて兵隊を募集するシーンは、コミカルな色眼鏡を通して描かれてはいるが、薔薇戦争の時代、中世の封建制が崩壊して騎士を中心とした戦いが終わり、戦争が起こる度に金で雇われる兵隊が軍隊の主流になったいたことをうかがわせ、興味深い。

メインプロットの王家の変転の方では、王とPrince Halの間の疎遠さがかなり強調されていた気がした。歴史上は、この時期、BolingbrokeはHalの反乱さえ恐れる程、親子の中は悪かったと何かの本で読んだ。シェイクスピアのテキストではそこまでは強調されていないと思うが、しかし、ふたりの間に相互不信があったことを示唆する演出だったと思う。

Halを演じたAlex Hassellは癖がない明るい2枚目の演技。父のBolinbrokeのJasper Brittonは不安と権威や自負が入り混じった陰影のある人物になっていたような(でもうつらうつらだった私の印象は当てにならないが)。

私としては、Antony Sherのフォルスタッフに加えて、Oliver Ford Davisのボケっぷりが堪能できたのが大きな収穫だった。

2 件のコメント:

  1. ライオネル2014年8月29日 11:30

    私は、”パート1”だけ、バービンカンのチケット抑えました。
    1部・2部を続けてみるのは体力的にきつそうなので・・・・
    ”パート1”だけを見ることにしました。物語的にはこっちのほうが好きです。
    アントン・シャー 楽しみです!!

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    1. ライオネル様、コメントありがとうございます。この劇、楽しいですね。次に行かれるのは年末でしょうか。充実したご旅行になりますように!

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