"The Canterbury Tales"
Mike Poultonの脚色による
Northern Broadsides / New Vic Theatre公演
観劇日:2010.05.29 14:30-17:30
劇場:Rose Theatre, Kingston
演出、作曲:Conrad Nelson
脚本:Mike Poulton
美術:Lis Evans
照明:Richard G. Jones
人形使い:Lee Threadgold
音楽:Rebekah Hughes
Movement:Matthew Bugg
出演 (以下は巡礼としての配役のみで、皆、テイルの役を複数やっている):
Ishia Bennison (Wife of Bath)
Emily Butterfield (Nun)
Matt Connor (Squire)
Phil Corbitt (Host)
Laura Cox (Prioress)
Andy Cryer (Poet Chaucer)
Michael Hugo (Cook)
Rosie Jenkins (Nun)
Guy Lewis (Clerk of Oxford)
Alan McMahon (Monk)
David Newman (Tavern Boy)
Rob Pickavance (Reeve)
Matthew Rixon (Miller)
Neil Salvage (Knight)
Richard Standing (Yeoman)
Andrew Whitehead (Pardoner)
☆☆☆ ☆ / 5
Northern Broadsidesの"The Canterbury Tales"をKingstonのRose Theatreに見に行ってきた。実に工夫に満ちた見事なアンサンブル劇。「子供のためのシェイクスピア」シリーズみたいな雰囲気だが、原作にはない駄洒落で脇道にそれた笑いを取るような事は一切ない。1回の上演に収まるように、長大な原作を簡略化しなければならないが、しかし、大変オーソドックスで、文豪の原作の内容とスピリットを最大限生かした公演に仕上がったと思う。笑える話、真面目な話、そして未完の話まで入れて、"The Canterbury Tales"全体を伝えようという、3時間を少し超えた野心的舞台。3つ、4つの有名な話を取り上げて、"The Canterbury Tales"の一部を演じるという形ではなく、可笑しいが下卑た話、貴族的な高雅な話、敬虔な話、上手な話や下手な話、退屈な話と魅力的な話等々、様々のお話のバラエティーを見せることで、話と話、語り手と語り手の間の有機的な繋がりを観客の心の中に生まれさせるという、原作の意図を実現しようと努力している。地方のツアー劇団ながら、凄い実力を見せた。Mike Poultonの脚本が素晴らしい。それぞれの話や作品全体のツボをしっかり押さえ、笑いと敬虔のバランスを取っている。言葉も原作を出来るだけ行かし、古い言葉が混じるが、それらの聞き慣れない古さがかえって新鮮に感じる。それぞれの巡礼は、我々観客に向かってしゃべり、観客も同行している巡礼の一人として、様々な人生談を分かち合う場に同席する。そして巡礼達が語るに連れて、他の役者が話を演じる。「語り」を見せる、タブロー・ヴィバン(tableaux vivants)、謂わば生きた紙芝居。
もし欠点を指摘するなら、全体が、観劇としてはやや長すぎる、騎士の話、賄い係の話など、いくらか退屈、などと言えるかも知れない。しかし、観客に受ける笑い話ばかり揃えて、"The Canterbury Tales"は「お色気たっぷりの笑い話集」と思われては、チョーサーを、そして中世人を大変誤解しかねない。真面目な話あってこそ、笑い話も生きる。
俳優は皆大変良かった。但、私が見た28日の公演では、粉屋役の俳優が足を怪我したため、激しい動きが出来ず、多少配役が入れ替わっており、台詞を書いた紙を持った人がたまに出てきたが、チームワークがあまりに良いので、私は全く支障を感じなかった。
脚本のMike Poultonは、4年前のRSCによる"The Canterbury Tales"2部作の脚本も担当しているが、今回は、1回の上演に収めたので、新バージョンだそうである。今回の上演は概して良い劇評を取っているが、RSCの上演の方が更に良かったという評者もいる。私はそちらを見て無くて、大変残念。しかし、今回は行けて、幸運だった。
今回の舞台化は、次のような話が選ばれている(順序などで私の記憶違いがあるも知れませんがお許しください):
1 プロローグ
2 騎士の話
3 粉屋の話
4 家扶(荘園差配)の話
5 料理人の話(ひどく下卑た話になりそうで、騎士に無理矢理中断させられる)
6 修道士の話(始まったところで暗転し、インターバルに)
インターバル
6 修道士の話(彼の話が終わろうという時点で後半開始。それまで他の巡礼は退屈してぐっすり居眠り中という設定)
7 免罪符売りの話
8 バースの女房のプロローグと話
9 オックスフォードの神学生の話
10 騎士付き従者(Squire)の話(話がうまく進まず、中断)
11 チョーサーによる、サー・トパスの話(話が下手、悪のりしがちで中断させられる)
12 賄い係(Manciple)の話
13 教区司祭の話(元は長い説教なので、その雰囲気を伝えるエッセンスのみ)
※最後に、全員で賛美歌を合唱(カンタベリー大聖堂到着を示すのか?)
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