現代のキリスト教会の直面する課題を取り上げた劇
"Love the Sinner"
National Theatre公演
観劇日:2010.6.14 19:30-21:55
劇場:Cottesloe, National Theatre
演出:Matthew Dunster
脚本:Drew Pautz
美術:Anna Fleischle
照明:Philip Gladwell
音響:Paul Arditti
音楽:Jules Maxwell
衣装:Rebecca Elson
出演:
Jonathan Cullen (Michael)
Charlotte Randle (Shelly, Michael's wife)
Fiston Barek (Joseph, an African young man)
Ian Redford (Stephen, a senior bishop)
Scott Handy (an aide to Stephen)
Louis Mahoney (Paul, an African church leader)
Nancy Crane (Hannah, an western [American?] church leader)
☆☆☆ / 5
Drew Pautzはカナダ人の若い劇作家。2007年にSoho Theatreにおける公演作品でデビューしたばかり。演出のMatthew DunsterはThe Royal Exchange (Manchester)やShakespeare's Globeなどで多くの作品を手がけているようだ。
現代の西欧の教会、特にアングリカン・チャーチ(イギリス国教会を中心として、それを母体とする各国の教会、日本聖公会など、「・・・聖公会」と呼ばれる教会が多い)が直面する問題を、あるイギリス人クリスチャンの男性で、教会活動をボランティアでやっているMichaelを軸として扱った作品。非常に熱のこもった、たたみかけるような台詞が続き、かなり緊迫感のある場面が多く、2時間半の上演時間だが、見ている間は引き込まれた。しかし、トピカルなテーマを色々と取り上げて、アイデアが先行した印象の作品で、私から見ると、主人公のMichaelや、それぞれのシーンに十分にリアリティーを感じられないまま終わった。
最初のシーンでは、あるアフリカのホテルで、欧米とアフリカのアングリカン・チャーチの代表が、おそらく大司教と思われるStephenの司会の下、教会がゲイの信者/聖職者にどう対応するかという問題など、現代の聖公会でも大きな問題について、熱のこもった議論を繰り広げるが、保守的なアフリカの代表者と、新しい方向に変えたい欧米の代表の間の隔たりは大きい。ポスト・コロニアル時代の教会のあり方を考える議論が続く。その場でボランティアの記録係としてパソコンでノートを取っていたMichaelがその後の主人公。次のシーンでは彼のホテルの個室。そこで彼はホテルのボーイのJosephとセックスをした後である。Josephは段々と脅迫口調になり、Michaelにイギリスに連れて行って欲しいと迫る。他の人が現れて、Michaelは何とかその場を逃れる。
イギリスに帰国したMichaelを待っていたのは、子供が欲しい一心の妻のShelly。しかし、Michaelはゲイ(ないしはバイセクシュアル)で妻とのセックスには熱心でないようだ。彼女は人工授精を試みたいと言うが、Michaelは宗教的な動機により人工授精に関してはかなり迷いがあり、はっきりした返事をしない。更にこれに、家に住み着いたリスを業者に処分させるかどうかという野生動物保護に関する議論が加わり、夫婦の議論は一層紛糾。更にその後、Michaelの留守中に、彼らの家に突然Josephがアフリカから訪ねて来る。Michaelは取りあえずJosephを教会の地下室に隠れて住まわせるが、やがてそれがStephenやその他の人にも知れることになる・・・。
Michael個人の生き方を通して、アングリカン・チャーチが直面する課題をくっきりと描いてくれた。一定の説得力はあるが、いささか色々な事を盛り込みすてはいないだろうか。また、最初の会議の行われた国とか、帰国後のMichaelの生活など、周辺の状況がほとんど描かれないため、何か地に足の着かない劇になった印象である。私の好みではあるが、特定の人物や状況をじっくり描くなかで、徐々に教会全体が抱える問題が浮かび出てくる、というような形にして欲しかった。
但、Drew Pautzの台詞は緊張感があり、また俳優もそれを良く生かして、飽きずに見ることが出来た。特にJosephを演じた若いFiston Barekは印象深い。
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