2010/06/24

"Lulu" (Gate Theatre, 2010.06.23)

男性の性的欲望の肉体化?
"Lulu"

Gate Theatre and Headlong Theatre公演
観劇日:2010.06.23  19:30-21:45
劇場:Gate Theatre, Notting Hill Gate

演出、脚本:Anna Ledwich
原作:Frank Wedekind
美術:Helen Goddard
照明:Emma Chapman
音響:Carolyn Downing
音楽:Alex Silverman

出演:
Sean Campion (Schoning)
Sinead Matthews (Lulu)
Michael Colgan (Schwartz)
Paul Copley (Dr Goll / Schigolch)
Helena Easton (Countess Geschwitz)
Jack Gordon (Alwa)

☆☆ / 5

ドイツの劇作家、Frank Wedekind (1864-1918)による2つの作品、"Erdgeist" (Eath Spirit, 1895)と"Die Buchse der Pandra" (Pandra's Box, 1904)の2つの戯曲をもとにAnna Ledwichが翻案した作品。演出も同じくLedwich。世紀末的な退廃を、十代後半の若い女性と彼女に取り憑かれた男達と女1人(レズビアン)の破滅を通して描く。比較が適切かどうか分からないが、『ロリータ』的な作品とも言える。画家が出てきて、彼女の絵を描きつつ、彼女の魅力に狂っていくところは、ちょっとドリアン・グレイ風のモチーフ。

劇の始め、主人公Luluは18歳。既に結婚しており、嫉妬に燃える年寄りの夫がいる。Luluは夫だけでなく、彼女のもとを訪れる男達を奴隷にする魅力を発揮する。(劇の建前では)究極の男性の欲望の肉体化した女性であり、彼女自身もそのようにあざとくふるまう。しかし、彼女自身のアイデンティティーはどこにも無い様にも見える。

その後、夫は病死や自殺などしていき、彼女はその度に新しい夫を得て生活する。しかし、徐々に身を滅ぼして、ついには逃亡の身となり、売春で生活せざるを得なくなる。最後は血にまみれた破滅が待っている。

Guardianの批評家Lyn Gardnerが4つ星をつけて褒めていたので、見る気になったのだが、私には、一体何が良いのか分からない劇だった。世紀末の退廃を描いた劇としては、美しさのかけらもなく、ただすさんだ男女の人生と性と死を描くだけ。主人公のLuluを演じたSinead Matthewsは、背が低いがそう若くはなく、十代の役は無理だし、失礼だが、そもそもfatal attractionを感じさせるような魅力は無い。単に、ほとんどコミカルと言って良い、安っぽい嬌態をふりまき続けるだけ。フリンジの小さな劇場なので、殺人シーンなど無ければ、大してエロティックでもないお色気ショーを見ているような感じ。男性のエロティック・ファンタジーのわびしさ、そしてそれに迎合した女性の生き方の悲惨さを描いた点が面白いと言えば、言えるかも知れない。

この劇は、Almeida at King's Crossでも、2001年にJonathan Kent演出で公演されているそうである。


さて、私は今回始めてこの小さな劇場、Gate Theatre、に出かけた。パブの2階にある、典型的都心のフリンジ。でも沢山の良い公演をしているようだ。下の写真はインターバルの間に劇場の前に出て休憩する観客。




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