楽しい(!)テネシー・ウィリアムズの初期の佳作
"Spring Storm"
Royal & Derngate Theatre, Northampton公演
観劇日:2010.7.1 19:30-22:15
劇場:Cottesloe, National Theatre
演出:Laurie Sansom
脚本:Tennessee Williams
美術:Sara Perks
照明:Chris Davey
音響:Christopher Shutt
作曲:Jon Nicholls
出演:
Liz White (Heavenly Critchfield)
Michael Thomson (Dick Miles)
Michael Malarkey (Arthur Shannon)
Anna Tolputt (Hertha Neilson, a librarian)
Gavin Harrison (Henry)
Janice McKenzie (Mrs Lamphrey)
James Jordan (Oliver Chritchfield)
Jacqueline King (Esmeralda Chritchfield)
☆☆☆ / 5
この劇を見たのは木曜。その前の週末、土曜の夜あたりから激しい腹痛と熱に襲われ、3日くらい寝ていた。木曜日はまだ病み上がりだったので、劇に集中出来る状態じゃなかった。3分の1くらいはうとうとしていたし、意識がはっきりしていた時も注意力が続かない。そういうわけで、今回は見た事実を記録しておく、という意味でだけ書いています。でも居眠りしてても良いかな、という、悪い意味ではなくてのんびりした内容の劇。
"Spring Storm"は1937年に書かれた。Williamsが20歳代の修業時代で、アイオワ大学の演劇創作コースに行っていた頃の作品だそうである。だから後の"The Glass Menagerie"や"A Street Car Named Desire"にあるような劇的緊迫感は望むべきではないだろう。長さは結構あるが(休憩を含め、2時間45分)、寝ぼけた私にもやや散漫である感じがした。しかし、大変魅力的な愛すべき主人公のキャラクターが素晴らしい。また、若者達が青春の悩みで悶々とする様子は、後の幾つもの名作の下地がしっかり出来ていることを示し、Williamsを知る上で貴重な作品だ。
物語の基本は、主人公で、南部の華やかな美人女性であるHeavenlyと彼女の二人の対照的なボーイフレンドの間の青春ドラマ。HeavenlyはBlanche Duboisが若くて、まだ影を帯びてなかった頃のような感じだろうか。なんだが昔の日活青春映画見てるみたいな、気恥ずかしさや懐かしささえ感じる楽しさ。それに、分厚い眼鏡をかけた図書館員で真面目人間のHerthaの、ユーモラスだが悲劇的な春の目覚めがサブプロットとして描かれていて、この点もまた国境を越えて青春ドラマの定番だ。隣の客は、この劇をvery dated(時代遅れ)と言っていたが、そういうナツメロ的な雰囲気がかえって気楽に楽しめる作品にしている。
作品の魅力は、ひとえにHeavenlyのキャラクターにありそうだ。無邪気でちょいと頭が空っぽで、突拍子も無い、馬がいななくような面白い笑い方をする、所謂サザン・ベル(Southern Belle)というタイプの美人。マリリン・モンローみたいなところもあるが、もっとからっとして、腕白で、いくらか少年っぽい。男性の多くは、こういう人にはころっと参るかも。メインのボーイフレンドのArthurは真面目くさった、Heavenlyの手もなかなか握れないような非常にお堅い男で、彼女にはじれったいけど、中身は愛すべき奴。もう一人のDickは、南部のワイルドマン。突然キャリバンみたいな恰好で出現したりして、Heavenlyを驚かせ楽しませる。そういう雰囲気は寝ぼけていてもかなり楽しめた(苦笑)。一方で、のちのWilliamsの戯曲、特に"Glass Menagerie"の若い気弱な娘Lauraに見られるような非常に繊細な女性心理は、いくらかコミカルではあるが、大変不器用で悩みの多いHerthaとして芽生えている。Heavenlyの母親Esmeraldaは猛烈にお節介で過保護の母親で、しかも自分の家庭を過大評価しているのは、"Glass Menagerie"の母親役、Amanda Wingfieldで完成したキャラクターだ。
フレッシュな青春群像を4人の若者が好演。特にLiz Whiteは素晴らしかった。もっとコンディションの良い時に見たかった!残念。
この公演はNorthamptonのThe Royal and Derngate Theatreという劇場のプロダクションで、ナショナルがCottesloeを提供している。地方劇団のレベルの高さを見せつけられた。また、この作品と共に、同じ劇団、同じ役者達やスタッフが、今回Eugene O'Neillの初期の劇、"Beyond the Horizon"もレパートリー公演している。そちらは今月後半に見る予定。
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コッテスローでこの演目がかかると発表された時に、戯曲を探したのですが、日本語には翻訳されていないようです。
返信削除"Spring Storm"というのも俗語なんでしょうか?
それとも普通に「春霞」みたいに思えばいいのでしょうか?
若いときの作品で完成度が低くても、後の作品に繋がっていくのは興味があります。
見ていて面白いですし、主役が上手いなら、時代遅れでもいいですよね。~私も観たい~
イギリスは地方の劇団&劇場のプロデュースもいいものがありますね。
デボンのニーハイ・シアターの演出力に感激しました。
ところでお身体はいかがですか?
TAKAOさんの書き込みに寝込んでいらっしゃるとあったので、案じていました。
今は気温が不安定で、調子をくずし易いですから、お気をつけください。
ライオネル様、コメントありがとうございます。
返信削除今回、ボーッとしていて、ブログは書くの止そうかと思ったのですが、見たという事実さえ、忘れっぽい私は忘れるのでやはり書きました。従って、内容は大変いい加減です。
2日半くらい寝込みましたが、もう大体平常に戻りました。平常もかなりがたがたなんですけどね(苦笑)。外国にいると、ひとりなので、起き上がれないほど悪い時は、食事も作れないし、相当不安になりますね。Yoshi