2010/09/18

REED(初期イギリス演劇資料集)の成立と意義:BBC Radio 3 "Sunday Feature: Myths and Mystery . . ."

先日、9月13日の朝、BBC Radio 3のSunday Feature(日曜特集)という番組で、The Records of Early English Drama (REED)シリーズの特集があった。このシリーズは、イギリスの中世・ルネッサンス劇研究にとって革命的な影響を及ぼしている資料集で、ブリテン諸島における、清教徒革命以前(1640年以前)の全ての演劇に関する資料の集成を目標としているシリーズである。イギリスの中世劇、シェイクスピア、その他のイギリス・ルネッサンス劇を研究している人は、自分の研究の為に直接REEDの資料を使うことはなくても、REEDを知らない人はいないだろう。

この放送では、REEDの創設者Alexandra Johnston (University of Toronto) を始め、David Klausner, John McGavin, Pamela King, Sally-Beth MacLean, Greg Walkerなど、REEDの編集者や中世・初期ルネサンス劇研究における英・米・カナダの指導的な大学者が次から次に出て来て、REEDの成立やその演劇研究における意味について解説する。また、シェイクスピア研究の第一人者Peter Hollandも出演し、より大きな視点からも解説する。また、俳優でグローブ座の前芸術監督であるMark Rylanceも演劇実践者の立場から彼らにとってのREEDの意味についてコメントする。

9月19日までBBC iPlayerで聞くことが出来る(今日は18日であるので、もう間もなく終わってしまうので残念だ)。

REEDの各巻は、大変高価な本であり、100ポンドを超えることが多いが、現在オンライン化されつつあり、大学図書館などへのアクセスがなくても、今後多くの人々に活用されるだろう。以下はREEDのLancashireの1巻。




















現在のイギリス中世劇研究は、残されている劇のテキストが少ないこともあり、もっぱらこうした上演の記録の発掘と編纂、そしてそれらに基づいた中世・近代初期演劇史の構築が主流と言って良いかと思う。こうした作業をする人々は、写本へのアクセス、古文書や古書体の正確な知識、そしてラテン語、中世の英語、更に中世のフランス語(仏語はイギリスでも広く使われた)のかなりの読解力が必要だ。これらの作業は、英米の数十人、大体30から40人くらいか、のコアとなる研究者によってほとんどが行われているように見える。こうした世界に、我々外国人のはいりこむ余地はほとんどない。そういう世界で、博士論文において何か新しい事を言わねばならないのは、大変難しい。

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