2010/10/17

The York Mystery Plays 2010 (2):前半

The York Mystery Plays 2010 :前半

At the Eye of the York (at the square in front of the Clifford Tower of the York Castle) 2010.7.11

まだの方は、まずこのポストの前の、「The York Mystery Plays 2010  (1):イントロダクション」を読んでくださると、幾らかはこの上演の背景が分かります。劇の物語やその背景等について説明していたら非常に長くなるので、ここではプロダクションの特徴についての私の感想のみとしています。

開始は12時とウェッブサイトにあったが、それは最初の上演場所のDean's Parkで、私がチケットを買っていたThe Eye of Yorkは最後の上演場所であったので、14時15分くらいからだった。以下の劇の時間は大体の目安。

The Eye of Yorkでの観客席の様子。ここは有料だが、このまわりの芝生に立ったり座ったりして無料で見ることも出来る。


最初のパジェント・ワゴン(山車/曳山)が到着し、上演準備をする人々。「天地創造」のペイジェント。


楽隊が劇の開始を告げるファンファーレを鳴らす。


(1) The Plasterers Pageant of The Creation of the World to the Fifth Day
by the Guild of Building
14:15-30

「天地創造から五日目まで」

ワゴンは約8人で動かしていた。軽々と動いていた感じ。楽隊が4人。
絵を描いた板のパネルを神の言葉に合わせて動かして、ユーモアたっぷりに天地創造を見せる。謂わばtableaux vivants/紙芝居。鳥だの鯨だのライオンだのが描かれたパネルが出てきて、客は大喜び。台詞があったのは神だけ。神を演ずる俳優のろうろうとした声が素晴らしい。時々その神が水筒から飲み物を飲んで喉を潤したり、巻物を見て台詞を確認したりしているところも笑いをよぶ。



(2) The Armourers Pageant of The Expulsion of Adam and Eve from the Garden of Eden, with the Glovers pageant of The Tragedy of Cain and Abel  
by the Guild of Freemen
c.14:35-?(終わった時間をメモしていなかったので)

「アダムとイブの楽園からの追放」

舞台は極めてシンプル。アダムとイブがエデンから追放されるシーンで始まる。Angel(女性)が二人に説教。アダムがイブに責任を押しつけようとするところで大きな笑い声が起こる。アダムがイブに対し、「女の話を信じてはならんな」というところでは、観客(女性?)からブーイング。Cainは観客に対し、God's curse right on you!と罵って劇を閉じる。そこでブーイング、そして拍手。こういう観客とのやり取りがいかにもミステリー・プレイらしい雰囲気をかもし出す。



(3) The Parchmentmakers & Bookbinders Pageant of Abraham and Isaac
by York St John University
?-15:20

「アブラハムとイサク」

旧約聖書のエピソード。アブラハムは神に息子のイサクを犠牲として捧げるように命じられ苦しむ。イサクはキリストの予示。

女性だけの5人で演じる。布を上手く使い神やAbrahamその他の男性のキャラクターを表現。台詞のdeliveryは大変様式化されていた。Isaacの両手を棒にくくりつけ、十字架を背負っているように見せる。その後、目隠しをする。



(4) The Pewterers & Founders(鋳造業者) Pageant of Joseph's Troubles about Mary
by Heslington Church
c. 15:25-45

「マリアの懐胎についてのヨセフの悩み」

ヨセフは、マリアが妊娠したと知って、誰の子かと悩むが、天使が現れて、マリアは処女懐胎であり、神の子を宿していると教えられる。

天使の役でとても小さな子供も出てきて、微笑みを誘う(台詞は無し)。幼稚園児から小学生程度の子供が8人も出て、それが大きな魅力(森の木や天使の役割)。教会のグループらしい個性。
最初からこの劇まで、大体においてシンプルな、中世風のコスチューム。
こういう素人の魅力を発揮するコミュニティー・グループもあって良いと思うが、一方で、ミステリー・サイクル全体の統一感や芸術的完成度はさして大事にされていないとは思う。



(5) The Girdlers (person who made girdles and belts of leather, mainly for the Army) & Nailers Pageant of the Most Tragic Massacre of the Innocents
by Aquare Pegs Theatre Company, St Peter's School
c. 15:50-16:20

「嬰児虐殺」

新しい王が生まれると聞いて恐れたヘロデ王がベツレヘムの全ての男性嬰児を手下の兵士に殺させるという良く知られたエピソードの劇化。

このグループはワゴンをワゴンとしてはステージを運ぶだけの為に利用。その上に白い布を掛けて、車輪を全く見えないようにしてステージにした。また、スピーカーで音楽や効果音を鳴らし、コスチュームも現代服。兵士は現代の迷彩色の軍服と軍用ヘルメット。
不気味な子供のパペットが最初に出てくる。
帽子を子供に見立て、兵士が押しつぶす。女達は一斉に絶叫し、かなりドラマチック。音楽も使用(ヴァイオリンとアコーディオン)。軋むような不協和音が不吉な雰囲気を醸成。
最後にステージには人形の子供だけが残される。他の俳優は厳かに去っていく。カーテンコールもない。大変印象的で良く出来た劇。



ステージを準備中の様子



(6) The Curriers(皮の仕上げ職人) Pageant of The Transfiguration of Christ
by the Lords of Misrule
14:16-30

山上のキリストの変容(マタイ伝17. 1-9)の劇化(イエスは3人の弟子だけを連れて山に登るが、そこでイエスはモーセとエリアと語り合う)。

ユーモアたっぷりの口上を述べつつ、ステージを巧みにもり立てる。手慣れたグループらしさ。劇は地上のオープンスペースを使って始められる。
台詞のデリバリーが全員素晴らしく、声も良く通り、単純な劇でドラマチックなシーンもほとんど無いが、とても説得力があった。キリストは多分20歳代後半の割合若い小柄の人。衣装は中世風。



(7) The Cordwainers (shoemakers) Pageant of Christ's Agony in the Garden and of His Betrayal into the Hands of His Enemies by Judas Iscariot
by The Parish Church of St Luke the Evangelist
16:36-?

「キリストの懊悩とユダの裏切り」

キリストは自らの使命(間もなくやってくる受難と死)を前に苦しむ。弟子のひとりユダは、主人をユダヤ人に売り渡す約束をする。

衣装は中世風。
非常に多くの人々が参加。合唱隊として12人が出る。教会の合唱隊そのままかも知れない。前回のキリストとはかなり違い、今回は40歳代後半くらいに見える年配の頭の禿げた男性。別のグループがやっているので、こういうずれが出るのは仕方がないが、違和感がある。
年配の人ばかりが主要な役をやっているせいか、演技のレベルは割合高いように見え、ドラマティック。
カヤパとアンナスは中世のキリスト教の聖職者(司教のような)雰囲気の衣装でまぎらわしい。しかも、アンナスは女性。テキストでは感じるようなこの二人の邪悪さは感じられない。
最後は全員の賛美歌の合唱で終わり、教会のグループらしい幕切れ。




この劇で前半が終わり、30分ほどの休憩が挟まれた。(後半は、数日以内に掲載します)

この上演や、同様の地域に伝統的に伝わる聖書劇(例えばオーバーアマガウにおけるキリストの受難劇)、中世劇等の上演を見た方、研究されている方、また大学等で勉強・研究されている方、今後の私の勉強の為にもコメントをいただければ幸いです。

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