2011/04/30

クライム・ノベル、Val McDermid, "A Place of Execution" (1999)

工夫豊かなクライム・ノベル
Val McDermid, "A Place of Execution"


(1999; HarperCollins , 2010) 603  pages.

☆☆☆ / 5

書店で何となく手にとって買った本。Val McDermidは、大変有名な犯罪小説作家でたくさん出版している。これは第一作のようだ。作家本人がBBCの討論番組に登場して見たことがあり、また、サラ・パレツキーが何処かで言及してしていたため、試しに買ってみた。

話はイングランドの片田舎の、かなり孤立した寒村で起こる少女誘拐・殺人事件のミステリ。誘拐されたAlison Carterという十代の女の子の血の付いた服や犯行に使われたと思われる拳銃や弾丸など種々の痕跡が発見される。怪しい人物が浮かび、数多くの状況証拠が積み重ねられ、死体が発見されないまま、婦女暴行と殺人の罪で男が起訴される。この死体が発見されないという事実が、警察にとって捜査や裁判を大変難しいものにする。

上記のように、他ではまず見ない(と思える)工夫のある小説。また、大変サスペンスあるシーンが多くて、読むのが非常に遅い私でも引き込まれる時が多かった。最近、これまで以上に体調が悪いのだが、横になってこの小説を読むことで、数日気をまぎらわせることが出来た。『処刑の方程式』という題で翻訳も出ており、テレビドラマにもなっているので、評価は高いのであろう(日本でもケーブル局で放映されたようだ)。このドラマには、Juliet Stevensonが出ていて、その点でちょっと興味あり。

しかし、全体としてみると、それ程感心しない。今のところ、この作家のものをまた近々読みたいとは思えない。というのは、主なキャラクター、主人公の警察官コンビ(D I George BennettとD S Thomas Clough)、が特に個性豊かとか、深みあるキャラクターとは言えず、魅力を感じないためだろう。また、パレツキーとか、Sansomに見られるような政治・社会に関するメッセージ性も無い。田舎の人々の軋轢とかゴシップなどがわんさか出てくるところは、バーナビー警部もの("Midsomer Murders" series)とちょっと似ているが、あのシリーズよりはかなりシリアスではある。

私には向いてないが、純粋にクライム・ノベルがお好きな方にはおおいに楽しめる作品だろうと思う。

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