2019/03/26

"Blood Knot" (Orange Tree Theatre)

"Blood Knot"

Orange Tree Theatre 公演
観劇日:2019.3.14 14:30-16:30
劇場:Orange Tree Theatre, Richmond

演出:Matthew Xia
脚本:Athol Fugard
デザイン:Basia Binkowska
照明:Ciarán Cunningham
音楽・音響:Xana

出演:
Nathan McMillan (Morrie)
Kalungi Ssebandeke (Zach)

☆☆☆☆ / 5

渡英した際には必ず出かけるOrange Tree Theatre (Richmond)にAthol Fugardの劇を見に行った。Finborough Theatreで見た"A Lesson from Aloes"に続いてFugardを2本見ることになったのは偶然だったが、この劇作家のことをより良く知ることが出来た。また、演出したのは、前の日に私を大変楽しませてくれた"Eden"の演出家でもあるMatthew Xia。更に、照明担当のCiarán Cunninghamも共通している。

アパルトヘイト時代の南アフリカ共和国の都市、ポート・エリザベスが舞台。腹違いの兄弟、Morrie (Morris)とZach (Zachariah) がひっそりと助けあいつつ暮らしている。Zachが勤めに出て肉体労働をし、Morrieは家に居てZachを主夫のように甲斐甲斐しく世話している。Morrieはとても色が白くて、白人としても暮らしていける。一方、Zachは黒人としか見えない。Morrieは長年Zachとは分かれて育ち、より良い教育を受けているようで、文字も読めるが、Zachはほとんど読めないようだ。2人は世間から孤立した生活を送っているが、ある時Morrieが新聞でペンパル募集欄を見つけ、Zachの名前で応募する。その後、若い白人女性から返事があり、手紙を交換し始める。但、実際に手紙を書くのは、文字を書けるMorrie。この女性の兄は警官とわかり、2人は怖じ気づく。当時の南アでは人種を越えて男女交際するのはタブーであり、増して彼女の兄が警官であれば、トラブルとなるのは明らかだから。やがて、ペンパルの女性がポートエリザベスにやって来るという手紙が来る。Zachは色の白いMorrieが自分の代わりに相手に会ってはどうかと言い、立派な帽子、スーツ、シャツ、ネクタイなど、彼らの貧しい暮らしにはそぐわない衣服一式を買ってくる。それを着てみたMorrieはまるで白人のような威圧的態度に変化し、Zachに召使い、あるいは奴隷に対するように横柄な口をきく。結局、その女性は白人男性と結婚式を挙げることになり、ポートエリザベス訪問はなくなったが、この出来事で、2人は膚の色の濃淡で作られる違いを強く自覚することとなった。

良く出来たプロットと2人の熟達した俳優による息もつかせぬ濃密な舞台で、かなり楽しめた。南アのアクセントを取り入れた言葉使いだったが、私でも物語の流れを見失わない程度には理解出来て良かった。但、南アフリカ共和国がアパルトヘイトを脱した今、元々この劇にあったであろう切実さの多くは失われているかも知れない。その一方で、いまだに人種や膚の色の濃淡による差別も厳然として残っていることを思い出させる意味もあるだろう。

大変良い公演で、リビューでも褒められているのに、空席が多くて残念だった。観客はほとんどが白人の高齢者。マチネだったし、リッチモンドという土地柄もあるかもしれない。

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