2019/03/23

"The Price" (Wyndham Theatre)

"The Price"

観劇日:2019.3.8 19:30-22:10
劇場:Wyndham Theatre

演出:Jonathan Church
脚本:Arthur Miller
デザイン:Simon Higlett

出演:
David Suchet (Gregory Solomon, furniture dealer)
Brendan Coyle (Victor Franz, policeman)
Adrian Lukis (Walter Franz, surgeon)
Sarah Stewart (Victor's wife)

☆☆☆☆ / 5

今回のロンドン滞在で唯一のウェストエンドの商業劇場での観劇。David Suchetの名演を楽しめて、無理をした甲斐はあった。滅多に上演されることのない作品だが、ミラー作品に多い父と息子達の相克のテーマを扱う。但、その父親は既に亡くなっていて劇には登場せず、ふたりの息子達、VictorとWalterが、死んだ父の遺産である家具を古物商に売却をする過程で、父親の後ろ暗さ、息子達に対する金銭上の不誠実が明らかになり、息子達は苦しむ。彼らは家具を売る事を通じて、父のことだけでなく、自分達の人生をふり返り、兄弟の間に残る鬱積された不満や罪悪感を吐露することになる。その古い家具を買い取りに来るのが、ユダヤ人商人Gregory Solomonで、演じるのはDavid Suchet。いつもの様に素晴らしい演技でうならせる。Solomonという名前が示すように、彼は一種の賢者であり、また抜け目のない商人でもあって、その真意を測るのは難しく、Suchetがその奥深さを充分に伝えていた。兄のVictorは父の世話をするために犠牲になって、地味な暮らしをしてきた。一方、弟のWalterは大学に進学し外科医になって豊かな暮らしをしており、兄に対して罪悪感を感じている。VictorとWalterを演じるBrendan CoyleとAdrian Lukisも大変説得力があり、そうした優れた演技に支えられた公演だった。ミラーの脚本はいつも女性の影は薄く、Walterの妻を演じたStewartはややもったいなかったが、それでも彼女は実力を発揮して、存在感はあった。贅沢な商業劇場で、ベテランの芸達者達による名演を味わった一夜。高級レストランで芳醇なワインを飲んだような感じ。但、私はお酒は飲めないんですけど(^_^)。

こういう公演を見ると、台詞を大事にするイギリス演劇の良い伝統をつくづく感じる。

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