2011/01/28

QIの件を振り返って:稲塚秀孝監督へのメール

記録映画『二重被爆 語り部山口彊の遺言』を撮られた稲塚秀孝監督が私に連絡を取りたいとブログに書かれておられると、友人から連絡がありました。BBCのQIの問題が大きくなってから思ったことも含め、稲塚監督へのメールに書きましたので、これまでのブログの内容と重複することが多いですが、その全文を以下に引用させていただきます。末尾にありますように、監督にもお断りしております。

稲塚監督が撮られた映画の公式ブログは、このページです。QIの件以降、稲塚監督がどのように考え、行動されているのかも記されています。BBCに対し、山口さんのドキュメンタリー映画を放送するよう働きかけをされるそうです。

(以下は稲塚監督へお送りしたメール)

稲塚様、

ブログを読ませていただき、ご連絡を差し上げております。

稲塚さまが連絡されたいと思ってブログで書いておられる50代の男性は、もしかしたら私のことかもしれません。私のブログはご覧下さったでしょうか:
http://playsandbooks.blogspot.com/

右のコラムのカテゴリーに、QIの問題について、というものがありますので、そこをクリックして下されば、この件の投稿をまとめてあります。

私自身は、一部の報道や反応に見られるように、この番組の制作者や司会者が山口さんを「侮辱」したとは思っておりません。しかし、この番組が、結果的にそういう気持ちを被爆者の方々やご家族に与えてしまったのではないかとは思います。悪意の無い番組であり、取り上げ方であったし、日本人でも英国通や英国のコメディーのお好きな方、英語でユーモアを詳細に解する方々の間では、この程度は笑って済ませるべき事、あるいは日本での過剰な反応は番組の誤解に基づいている、というご意見があるようです。

しかし、私自身は、原爆の恐ろしさ、その悲惨な体験を考えると、そもそもこのような「コメディー番組」で取り上げるべき事柄ではない、という意図でBBCに抗議を致しました。

お恥ずかしい事に私は山口さんについてそれまで知らなかったし、原爆の被害等についても詳しいわけではありませんので、こういう事で抗議する資格があるのか、当初の12月18日頃、しばし考えました。しかし、日本では放映されないこの番組をイギリスで見て、英語で大体を理解出来、そして、日本人であるなしにかかわらず、その非礼を感じる事のできる人が何人いるか考えた時に、私があの時点でそのままにしてしまったら、誰も気づかないままに終わるかも知れないと感じました。

自分のメールだけでは、制作者側はちゃんと考えてくれないだろうと思い、ブログとメールで友人に呼びかけ、またメールで、大使館や3つの新聞社、日本被団協にもお知らせしました。広く呼びかけたら、という事は、友人の励ましもきっかけになりました。そうした経緯は私のブログに書いております。

その後、共同通信社が大使館が抗議したことを配信し、一気にマスコミに取り上げられたことはご存じの通りです。

大変悲しい事に、その後、日本では、一方的なBBC、そしてイギリス叩きがネットを中心にあり、差別的な言辞が多く使われているようです。一般に、こうした差別意識は日本のほうがイギリスよりも遙かにひどく、日本人はこの点ではイギリスを始めとする欧米諸国から学ぶことは沢山あると思います。

私は18歳で大学の英米文学科に入学して以来40年弱の間、イギリスの文学や英語を勉強してきました。イギリスにはひとかたならぬ愛着があり、イギリス国民の良いところも常日頃から感じております。また、BBCはイギリスではニュースやドラマなどを中心に毎日視聴し、その多岐にわたる偏見の少ない報道姿勢、丹念な番組制作には感心しています。だからこそ、今回のような件で、注文をつける価値があると思いましたし、BBCには柔軟に視聴者の意見を拾い上げるシステムがあるだろうと予想しておりました。これが民放やケーブル局であれば、そうはしなかったでしょう。

さて、25日朝日新聞夕刊(東京版)でBBCがマーク・トンプソン会長名で謝罪の書簡を大使館に送った旨の報道がありました。Asahi.comでも掲載されていました:

http://www.asahi.com/international/update/0125/TKY201101250107.html

ではとりとめのない乱文で失礼致しました。稲塚様のご健勝をお祈り致します。

XX大学大学院生
XXXX

追伸 
多分もう一回、この件についてブログで報告しようと思っております。上記の私のメールが私の現在の思いを示しているので、ブログで使わせていただくかも知れませんが、ご容赦下さい。
(メール終わり)

2 件のコメント:

  1. はじめまして。
    ESQと申します。
    ブログで貴殿のブログを紹介させてもらいました。
    御挨拶が遅れ、申し訳ありません。

    「イギリスBBCの二重被爆者嘲笑問題について」
    http://esquire.air-nifty.com/blog/2011/01/bbc-4a79.html

    「BBCの二重被爆者嘲笑問題に対する反響について」
    http://esquire.air-nifty.com/blog/2011/01/bbc-a3e6.html

    私も貴殿と同じ感想を持っており、ブラック・ジョークで済まされる範囲を超えている取り上げ方であると思いました。

    そもそも、おっしゃるように、こうした番組で軽く扱われる類の題材でないことに加え、原爆および被爆の事実そのものを笑い飛ばしてしまっていることに私は非常に違和感を感じました。

    BBCがアウシュビッツや9・11テロを同じように取り上げて同じような形で笑い飛ばすでしょうか。私は貴殿のこの問いに全く同感です。

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  2. ESQさま、コメントありがとうございます。

    既にこの件に関してのそちらのブログ記事は読ませていただいておりました。

    私はイギリスのコメディーに関しては疎いので、このブログでは事実を簡単に報告しただけですが、その後、ESQさまを始め、私よりずっと英語やイギリスの文化に詳しい方々のブログ記事を読み、私も随分勉強できました。私が上手く書けなかった事を色々な方が書いて下さいました。私は賛成できないにしても、抗議するような内容の番組ではない、という意見も含め、真面目に論じたり、詳しく解説して下さった方がたくさんいて良かったと思っております。 Yoshi

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