連休の間、日頃単調で何も無い私の生活にもちょっと楽しい行事があった。その最初がこれ。チケットは長年の友人であるご夫妻からいただいた(サンキュー!)。有楽町駅近くの三菱一号美術館は始めて出かけた。素敵な建築物と聞いていたが、噂通りなかなか良かった。この時代の洋館、良いですね。東京都立美術館もちょっと似てたかな。これはクイーン・アン様式というそうだ。
しばらく前に行ったラファエル前派展の、時代的にはその後に続く時代の美術。また、これはヴィクトリア&アルバート・ミュージアム(V&A)の所蔵品による展覧会なので、絵画や彫刻だけでなく、家具、磁器、書物、タイル、タペストリー、写真、アクセサリー、建築デザイン・・・ええっと、まだあったかな、とにかく色んなジャンルにわたる作品が展示されていた。その時代の英国の豊かなミドルクラスの人々(the upper middle class)あたりの趣味を反映した、人々の暮らしを全体的に見られる展覧会。但、私の好みからすると、ちょっと総花的か?V&Aにはどのジャンルでも膨大な作品があるから、どれかに集中した方が・・・というのは無いものねだりか。でもやはり絵画が多くて、印象に残った。
その絵画だが、ラファエル前派の後で見ると、つい比べてしまうのは仕方ない。で、私としてはガクッとする面はある。この展覧会のチラシやホームページの背景にもなっているアルバート・ムーアの「真夏」とか「花」などその典型だが、どうもきれいすぎというか、装飾品としての絵画という印象で、描かれている人(大抵女性)の人間的魅力が伝わってこない。ラファエル前派の描く女性と比べ、いささか物足りない。きれいだとは思うけど・・・。そういった中で、フレデリック・レイトンの「パヴォニア」、ロセッティの「愛の杯」などは、個性的な女性が描かれて、気に入った。ジョージ・ワッツの「孔雀の羽を手にする習作」のヌードも大変魅力的。この時代の人、大変孔雀が好きみたいだ。あちこちにあった。特にウィリアム・ド・モーガンの青と緑を基調とした美しい大皿に描かれた大きな孔雀は印象的。結局、見終わって振りかえると、私は、唯美派の本丸(?)である19世紀末の作品よりも、今回の絵画でも1850年前後のラファエル前派の作品が良かったなと感じていたわけだ。時代が進むにつれ、絵に生気や思想がなくなっていくような印象を受ける。その代わりに、「美」だけを純粋に追い求めたから唯美主義と呼ばれるのだろうか。絵画の装飾品化、商品化/商業化(commodification / commercialization)とも見ることもできそうだ。一方で、そうした世紀末の絵画は、陶磁器とか織物とか家具などのジャンルにおける繊細な作品と大変上手くマッチしているとも言える。絵画や調度品、そしてインテリア・デザインと建築全体、更におそらく庭園に至るまで、セットとして統一された雰囲気を醸成するのかも知れない。例えば、ウィティック・マナー(Wightwick Manor)のように。
私はモリスのタイルとかタペストリーに興味があったが、確か1点ずつくらいしかなかった。一方、建築のデザインはたくさんあったなあ。そのあたりは、私は駆け足(^_^)。
音声ガイドを借りた。ラファエル前派展ではとても役だったし、パネルを読む面倒がなくて良かったが、今回の音声ガイドははずれ! 作品そのものの解説が聞きたいのに、イントロならともかく、ひとつひとつの展示品のガイドにおいても美術史、文化史に関する前置きが長すぎる。更に、パネルの解説も、V&Aの学者の書いたものを訳しただけで、こなれてない日本語訳が読みづらい。向こうの学者の文章を参考にするにしても、新たに書きおろすべきだ。音声ガイドや解説が分かりにくくて作品を見るブレーキになっては、本末転倒。
ミュージアム・カフェに寄ろうと思っていたがかなりの人が待っていたので諦めた。ギフトショップは、素敵なものもあったが高い。私などは絵はがきで精一杯。
とまあ、色々文句もつけたかもしれないが、美術館の立派な建物も含め、楽しいお出かけだった。5月6日まで。まだの方、お勧めします。展覧会のウェッブ・サイト。
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