上記の様に、半分くらいはBBCで放送時に既に見ていたのだが、せっかく買ったDVDなので、最初から見なおした。大分忘れていると言う事もあるが、2度目に見た部分でも、話の大筋は分かっていても登場人物の変化を追っていくだけで、結構面白かった。更に今回は、10話くらい見たところで、犯人を知ってしまったんだよね(^_^)。これは内容から推量したのではなくて、偶々見ていたガーディアン紙のテレビ・リビューのビデオ・クリップで、第1シリーズの犯人をリビューアーが言っちゃったんだ!昔のドラマだから、もうそんな事気にする人もいないということなんだろうけど・・・。ガクッときたけど、それでも見続ける価値は充分あった。このドラマの面白さは、基本的に、キャラクターの心理描写だから。クライム・フィクションで言うと、イアン・ランキンとかP. D. ジェイムズを読むような感じ。犯人にたどり着く紆余曲折から、ランキンの読後感に近いかなあ。
物語全体の大枠は、ナナ・ビルク・ラールセンというコペンハーゲンの高校生が行く方不明になり、やがて死体で発見される。その後の捜査期間の20日間を、犯人逮捕まで、1日1エピソードとして描いている。
ストーリーは幾つかの大きな筋を織り合わせて出来ているが、特に、刑事サラ・ルンドとイエン・マイヤーの犯罪捜査と、若手政治家トロールス・ハートマンと市長ポール・ブレマーを中心としたコペンハーゲン政界内の権力闘争が大きな2本柱と言えるだろう。更に、殺されたナナの家族、父のタイス・ビルク・ラールセン、母のペニレ、そして彼らの周辺の人々、また、ナナの教師などの学校関係者などが、それぞれに様々な葛藤を抱えていて、心理的にも複雑なドラマを繰り広げる。
サラ・ルンドの、食らいついたら離さないしつこい捜査、それに振り回される部下のマイヤーの哀れさ、更に二転三転する捜査対象に翻弄されるビルク・ラールセン一家やハートマンと彼の2人の側近、リエとモーテン、のキャラクター描写も魅力的。被害者家族、タイスとペニレの夫婦は特に悲痛だ。警察の捜査に一喜一憂し、怒ったり絶望したり、警察を信じたり不信に陥ったりと、良く描けている。タイス夫婦の幼い息子達も哀れ。
政界の権力闘争は、それ自体がドラマとして独立できそうなくらい面白い。特に引き込まれたのは、市長のポール・ブレマーの底知れぬ老獪さ。野心溢れ、エネルギッシュなハートマンを様々な方向から執拗に揺さぶる。ある時は相手を懐柔したかと思えば、ある時は徹底的に相手の弱みを針でつつくように責め立てる。ハートマンはこの化け物のような政治家に翻弄されるが、一方で彼も貪欲な野心を持ち、目的の為には、どんな人物も切り捨てる冷酷さを備えていて、ブレマーの好敵手と言える。私はこういう腹の奥底の知れない政治家とか、野心たっぷりの人などを描くドラマや小説にかなり興味がある。特にブレマーのような人には、お近づきにはなりたくないが、ドラマで見るのはとても面白い。
イギリスのクライム・ドラマもそうだが、日本の娯楽ドラマでうんざりさせられるお涙頂戴のセンチメンタリズムがないところも良い。最後、精神的にもずたずたになったサラ・ルンドが警察署を無言で出ていくところがとても印象的。
私は子供の時以来、春、特に3月4月が大嫌いで、毎年憂鬱な気分で過ごすんだが、このドラマを見ている間は気が紛れ、ありがたかった。
(関連記事)2011年5月の記事で、幾つかその頃見ていたドラマについて書いていて、最後にThe Killingにも触れていた。
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