10代20代の女性の間で深刻化する貧困の実態を描いた今年1月のクローズアップ現代「あしたが見えない」。放送後、番組サイトが異例のページビューを記録した。通常8千程度のページビューが、60万を超えたのである。そして、寄せられたのは「他人事では決してない」という切実な声だった。いま、若い女性たちの間で何が広がっているのか。取材を進め見えてきたのは、親の世代の貧困が、子の世代へと引き継がれ、特に若い女性たちに重くのしかかるという“現実”だった。
「クローズアップ現代」では、貧困に苦しむ若い女性、特にシングルマザーが、他に仕事がなく風俗産業に流れ込む様子が取り上げられていたと思いますが、今回はその面はカットされていました。その分、何とか教育を受けて貧困から抜け出したいと努力する女性の奮闘ぶりが克明に取り上げられ、多少希望を抱かせる内容となっていたと思います。風俗業界やAV映画で働く女性と貧困の関係も重要な社会問題なので、改めてそれに特化して取り上げて欲しいと思いました。
イギリスではまだ伝統的な労働者階級の残滓があり、彼らのプライドも感じられますが、日本は総中流の幻想が醒めた後、貧しい女性が文字通り「サイレント・プア」になって孤立してしまい、行政にも充分見えていないのが一層問題を深刻にしています。家庭、地域、親戚、学校、地方行政、といった個人を幾重にも取り囲んでいるはずの大小のコミュニティーが希薄になり、あるいは崩壊し、ひとりとなった若い女性(老人もそうですが)が、どのレベルのセイフティー・ネットにも引っかからず、貧困の可視化さえもされず、食費を削ってまで必死でひとりでもがいている状況があります。
今の日本やアメリカ、中韓のように、貧富の差が極端になってくると、中上流の人達は、貧困でもがき苦しむ人達を横目で見ながら、物質的文化的豊かさを楽しむという社会になり、彼らの子供達は冷淡であることを学びつつ育ちます。社会全体が、一種の経済的アパルトヘイト化し、誰もが精神的に貧しい社会となっていきます。
ボランティアとして、あるいはNPOや行政機関の職員として、日々貧困の現場で格闘し、苦しんでいる人々と向き合っている人もおられます。ですが、私も含め、皆がそういう生き方を選ぶことは出来ません。しかし、自己実現や自分のまわりの人の豊かさを追いかけるだけで満足してしまっている人間ばかりでは、日本社会は物質的にも、そしてそれ以上に精神的にも貧しい社会になると思いつつ、見ました。もう高度成長経済は望めない今、社会の富の再分配をもっと計らないといけないと思うし、子供や若者の貧困を取り除くために、他の面で国民ひとりひとりが大きな犠牲を払わなければいけないでしょう。そういう政治を求めたいのですが、今の政権はどうなんでしょうか。経団連の代弁ばかりしているようにしか、見えません。
再放送は5月1日深夜午前0時40分から。ひとりでも多くの人に見て欲しい番組です。
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