2011/03/04

"Twelfth Night" (National Theatre, 2010.2.26)

Peter Hallの米寿記念公演
"Twelfth Night"

National Theatre公演
観劇日:2010.02.26  19:30-22:30
劇場:Cottesloe, National Theatre

演出:Peter Hall
脚本:William Shakespere
セット:Anthony Ward
照明:Peter Mumford
音響:Gregory Clarke
音楽:Mick Sands
衣装:Yvonne Milnes

出演:
Marton Csokas (Orsino)
Rebecca Hall (Viola)
Simon Callow (Sir Toby Belch)
Finty Williams (Maria)
Charles Edwards (Sir Andrew Aguecheek)
Charles Edwards (Feste)
Amanda Drew (Olivia)
Simon Paisley Day (Malvolio)
James Clyde (Antonio)
Ben Mansfield (Sebastian)
Samuel James (Fabian)

☆☆☆☆ / 5

Peter Hall、なんと80歳だそうである。RSCを作り、Nationalを長らく率い、その後も、Peter Hall Companyを作って、引退することを知らず、まっしぐら。その息つく事を知らない疾走ぶりは蜷川幸雄を思い出させるが、蜷川のように円熟するのを拒否したような片意地はったところは無く、今のHallは、古典をオーソドックスに磨き上げるのを好んでいるように見える。イギリスの演劇界、特に公的補助のある公演では、何か新機軸を打ち出す事を期待され、単に伝統的にしっかりした公演をするだけでは許されない雰囲気があるが、Hallはあまりにも大御所であるので、余裕を持って好きなように作れるのではないだろうか。保守的と言われたって痛くも痒くもないし、批評家もさすがに彼に厳しい言葉を使わない気がする。この公演も、4つ星をつけて賞賛している批評家が多い。確かに見て損の無い、良い公演だが、いささか点が甘い?(私は最初3つ星にし、しばらくしてから4つ星に書き直した。まあどちらでも良い感じである。)

ということで、伝統的なスタイルの公演。色々と細工の出来る柔軟な空間のCottesloeだが、ウエストエンドの商業劇場の様に、ひとつの面だけを額縁舞台の様に使う(やや勿体ない感じ)。道具は、ステージの大半をおおうような大きな天蓋の布を垂らしたり、引っ張り上げたりする他は、大したものはない。伝統的なコスチュームと音楽。そして、何よりも丁寧な台詞の発話により、台詞を詩として楽しむように気が配られている。シェイクスピアなどのルネサンス劇を見ていると、詩をたたき壊すような台詞の言い方をする俳優が必ずと言って良いほどいて、イライラさせられるものだが、そういう人は全く居ない。観客によっては、退屈な台詞回し、と思うかも知れないが、私はこれが一番。

Peter Hallの娘、Rebecca HallのViolaは、ストレートな、とても美しい主人公。但、人形のようで、内面に隠された熱い想いはそれ程伝わらず、やや物足りない。その点では、貫禄たっぷりで、肉感的なところもあるAmanda DrewのOliviaは良い。Simon CallowのTobyは申し分なし。ちょっと目立ちすぎて、Malvolioを食ってしまった。しかし、そのSimon Paisley DayのMalvolioも、シャープな、ピューリタン的冷たさが良く出ていて、私は大いに気に入った。Charles EdwardsのSir Andrewも、なよなよした雰囲気が上手い。

この公演の一番の特色と感じたのが、David Ryall演じるFeste。この俳優さん、1935年生まれであるから、76歳!声も良く通って、元気さに感嘆。しかし、とにかくお年寄りなのである。80歳のPeter Hallは、この劇の狂言回し役であるFesteに76歳の俳優を当てて、自分の思いを託したのだろうか。人生という大騒ぎを達観して眺めるかのような、静かな、淡々としたFesteだった。このFesteの造形を始め、全体として、陽気な騒動や祝祭的な雰囲気よりも、メランコリーが勝った公演だった。

見終わって、大きな満足感と共に劇場を後にできる公演。新しさを追いかける公演が多い中、シェイクスピアを見慣れていない人に是非見て欲しいトラディショナルな演出と演技だ。でも強いて言えば、今ひとつ特徴に乏しい点が物足りない(無いものねだりとは思います)。とは言え、帰省中に見た串田和美版の、台詞を破壊してしまった無惨な『十二夜』を思い出すと、ストレートにやることを恐れないHallの貫禄を感じ、この公演の素晴らしさにあらためて気づかせられる。

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