2012/03/25

"Hay Fever" (Noël Coward Theatre, 2012.3.24)

カワードの言葉の魔力が凄い
"Hay Fever"

劇場:Noël Coward Theatre
観劇日・時間:2012.3.24, 19:30-21:30 (1 interval)

脚本:Noël Coward
演出:Howard Davies
デザイン・衣装:Bunny Christie
音響:Mike Walker
照明:Mark Henderson

配役:
Judis Bliss (ex-actress): Lindsay Duncan
David Bliss (novelist, Judis's husband): Kevin R McNally
Simon Bliss (their son): Freddie Fox
Sorel Bliss (their daughter): Phoebe Waller-Bridge
Richard Greatham: Jeremy Northam
Myra Arundel: Olivia Coleman
Sandy Tyrell: Sam Callis
Jackie Corydon: Amy Morgan
Clara (maid): Jenny Galloway

☆☆☆☆★/5

Judith Blissは元女優で、一年ほど前に引退し、悠々自適の生活を楽しんでいる。夫は小説家で、一日の大半を書斎に閉じこもる生活。夫婦は、それぞれ人生をもう少し華やかなものにしたいと思い、ある週末、自宅にそれぞれ異性の友人を招くが、あわよくばひと時の気楽なロマンスを楽しみたいとの虫の良い打算をいだいている。一方で、2人の間には年頃の娘Sorelと息子Simonがいる。ふたりとも我侭でボヘミアン、そして能天気でピンボケのどら息子と娘。この2人もまたその週末にそれぞれの恋人を招いてしまったから、合わせて4人の客が泊まりにくることになり、大騒動。それでなくてもぶっきらぼうな家政婦のClaraは、一段とご機嫌斜め。やってきた客は、とぼけた4人家族に皆てんでに振り回され、そのうち、客同士で仲良くなったり、Bliss家の突拍子もない振る舞いに対してこぼしあったりする。主に個々のシーンのおかしさ、台詞での言葉のずれでずっこけたりして笑わせるのだが、大きなプロットらしいプロットはない。どたばたシーンは少しはあるが、'Private Lives'と比べてもアクションは多くは無くて、あくまで言葉の面白さがミソの劇。それでこれだけ面白くなるんだから、脚本自体の言葉が実に巧みに書いてあるのだと思う。残念ながら、戯曲を読んでないので、可笑しなところが聞き取れない時が多くて、大変悔しかった。

劇はBliss家の田舎の邸宅の居間を舞台としているが、女優や小説家、そして画学生(息子Simon)の家らしく、画家のスタジオのような、田舎風なのにモダンなインテリア。ビクトリア朝風のドローイング・ルーム・ドラマのかび臭さを感じさせない。

Lindsay Duncanはあらためて褒めるのもおこがましいが上手い。Jeremy Northamも凄い。日ごろ、低い苦みばしった声の渋い二枚目役者として、私はイギリスの男優の中でも特に好きな人なんだが、この劇の役どころは、朴訥で内気、ソフトで不器用な公務員(外交官のようだ)。これがあのNortham?としばらく分からなかった。他では、特にBliss家のバカ息子、バカ娘が、実に突拍子も無い連中で愉快。特にPhoebe Waller-Bridgeは最高の滑稽さ!息子を演じたFreddie Foxは、透き通るような白い肌と金髪の美男だが、BBCのクライム・ドラマ, 'The Shadow Lane'でホモセクシュアルのギャングの若い愛人、そしてやがて自分も残忍な犯罪に手を染める冷血の若者を好演していて覚えている。彼はEmilia Foxの弟で、Edward Foxの息子。

最終的にこの劇の心温まるところは、そろそろ老境の入り口に立ち、倦怠感漂う夫婦と、親を離れ始める年頃の子供からなる一家がばらばらになりそうな時期にさしかかるが、それぞれの恋人をだしにしてお互いの愛情を確かめ合い、一家の結束を取り戻すというところか。ただ笑わせるだけでない家族のドラマとしての骨組みが全体を支えている。さすがCowardの代表作と見なされるだけはある。劇のタイプとしては私の最も好きな内容の作品ではないので付けた星は4つだけど、この種の公演ではこれ以上は望めないと思える最高のエンタティメント。それにしても、だしに使われた恋人たちは大迷惑!

2 件のコメント:

  1. ライオネル2012年3月26日 9:11

    これだけでも、見に行きたい!!残念!!

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  2. ライオネル様、

    6月2日までチケットを売っているようです。

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