2012/03/03

修道女フィデルマ・シリーズの1巻、Peter Tremayne, "The Haunted Abott"

Peter Tremayne, "The Haunted Abott"
(2002; Headline, 2003) 360 pages

☆☆☆☆★ / 5

中世初期、紀元666年、アイルランド人修道女で法律家、そしてアイルランドの王国Cashelの王の妹でもあるSister Fidelmaと彼女の連れのイングランド人修道士Eadulfは、カンタベリーでの仕事を終えてアイルランドに帰国する前にEadulfの故郷の村に寄ろうとする。ところが最寄の修道院の修道士でEadulfの幼馴染であるBotulfから、是非自分の修道院、Aldred's Abbey、に寄ってくれ、との知らせが届き、激しい雪の中、真夜中に到着する。しかし着いてみるとBotulfはその日に何者かに殺害されていた。更に、その修道院を支配する院長、Abbot Cild、は何かに呪われたかのような鬼気迫る様子で、二人に敵意を剥き出しにし、Botulfの死は、異国の魔女、Fidelmaの仕業だと決め付ける。二人は否応なく事件の真相を解明するために奔走することになる。しかし、次々と殺人事件が起こる。Cildの兄弟でアウトローのAldhereとCildの兄弟間の憎悪、Cildの死んだ妻、Gelgeis、の亡霊の出現、隣国の領土的野心や、更にアイルランドの部族まで巻き込んだ争い、等々がこれらの事件の背後にあった。

この修道女フィデルマ・シリーズはこれまでも何冊も読んできたが、今回は特に興味を引いた。というのも、舞台がイングランドで、丁度異教とキリスト教がせめぎあっている7世紀という面白い時期だからだ。Cild率いる修道士が武器を取って犯罪者を追いかけたりなど、この頃は修道士と言っても結構おっかない、僧兵みたいな連中も居たのかなとも思わせる。フィクションだから鵜呑みに出来ないが、時代背景を想像しつつ読むと面白かった。

このシリーズで一貫して表現されている中世アイルランドにおける女性の地位の高さだが、これはどの位歴史的真実を反映しているのだろう(どなたか、お教えください)。当時のアイルランドについてはまったく無知なのだが、そのうちこの点についてちょっと勉強してみたい。

中世イングランドを舞台にした軽い歴史捕物帖、そしてフェミニスト・ヒロインのお話として、楽しい娯楽小説だ。

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