2018/05/04

「1984」(新国立劇場、2018.5.3)


「1984」

新国立劇場公演
観劇日:2018.5.3 13:00-14:50 (no interval)
劇場:新国立劇場 小劇場

演出:小川絵梨子
脚本:ロバート・アイク、ダンカン・マクミラン
翻訳:平川大作
美術:二村周作
照明:佐藤 啓
音響:加藤 温
映像:栗山聡之
衣裳:髙木阿友子

出演:
井上芳雄(ウィンストン) 
ともさかりえ(ジュリア)
森下能幸 
宮地雅子 
山口翔悟 
神農直隆

☆☆☆☆ / 5

ゴールデン・ウィークの後半、にぎやかな地区にある私のマンションのそばでは、毎年、連日ロックコンサートやら演芸大会やらでもの凄い騒音。読書が出来ないどころではなく、その音でかき消されて、テレビも見られない。そこで、昨日はこの騒音から逃れるために、そして元々見たかったので、新国立劇場小劇場での「1984」の公演を見に出かけた。

この劇は2014年にウエストエンドの商業劇場で既に見ている。イギリスの公演は、アルメイダ劇場とノッティンガム・プレイハウスの共同プロダクションで、ウエストエンドにトランスファーしたようだ。イギリスでの公演のことは、忘れっぽい私のことなので、もう記憶に残ってないが、とても面白くて説得力があった印象が残っている。その時にブログに感想を書いているので読み返してみると、今回の公演と大体同じ印象だ。特に拷問の場面はもの凄い緊張感があった。

一種の読書会風のフレーム、映像を使ってウィンストンとジュリアの密会のシーンを映すなど、イギリスでの公演と同じで、脚本でそうなっているのだろう。イギリスで見た時は、折角の舞台公演で映像を使う事に抵抗を感じたが、今回また見て、これは隠しカメラの映像として理解すべきなんだろうと思い、このやり方に納得出来た。

井上芳雄、ともさかりえ、なかなかの熱演で良かった。ただ、セックス・シーンは、イギリスの舞台と比べると物足りない。オブライエンを演じた俳優も良かった。セットも説得力ある。特に純白の拷問部屋が良い。しかし、古い骨董屋とその裏部屋の場面が、古めかしさ、うらぶれたところが感じられないのはやや残念。

言葉の定義や「真実」、そして歴史さえも、権力を持つものの思うままにねじ曲げられるというこの作品のメッセージは、今の世界にぴったり当てはまる。折しも、「柳瀬秘書官が加計学園関係者との面会を国会で認める方向で調整している」、と報じられた。面会があったか否かという事実については、政治情勢によって「調整」する種類のことだそうだ。