以下は最近読んだ文献の覚え書きです。
中世末期のイングランドにおいて女性が演劇やその他のパフォーマンスに参加することは(多くは無いけれど)ある程度記録にあり、それに対しはっきりとした社会的差別や拒否感は見られない。しかし、16世紀に入ると社会的な拒否感が広がり、女性がパフォーマンスに参加することが段々難しくなる。そしてReformation以降は大変困難になる。但、ジェントリーなど富裕層の屋敷などでは歓迎され続ける。
読みかけたまま途中でやめてしまい、最後まで読んでない論文からですが、この論文は、 James Stokes, 'Women and Performance in Medieval and Early Modern Suffolk' Early Theatre 15.1 (2012), 27-43。これから最後まで読もう。これまでも、ミステリー・プレイなどに女性が参加したらしいという記述は断片的に読んできたが、この論文はある程度纏まってこのトピックを論じている。The Records of Early English Dramaシリーズの本を自分で徹底的に調べればかなり我々でも分かることなんだけど。この論文の註に筆者自身の論文も含め、過去の関連文献が列挙してあり、関心のある方には便利。
女性がパフォーマンスに参加することがあったという事実を踏まえると、では世俗の(教会外の)演劇で男性が女装して女性を演じる伝統はどの様にして起きたのかという問題は残る。典礼劇など、修道院の演劇にヒントを得たものだろうか。中世イングランドで女性が演劇に参加した例があまりないのは、女性参加を排除したわけではなく、女性が家庭の外の公的な社会活動に参加できるような社会ではなかったから、というやや古い本で読んだ見解があるが、納得がいく(Glynne Wickham, "The Medieval Theatre" 3rd ed (1987) pp.93-94)。例えば親方の未亡人などを除き、劇の上演母体であるギルド(職業組合)のメンバーにもなれなかったから、ミステリー・プレイに参加することも難しいだろう。
以上、ささやかなノートですが、老後に調べたいテーマのひとつ。そういうのが多すぎます(苦笑)。女性関連のテーマはシェイクスピア研究者の方など詳しいでしょうね。もっとよくご存じの方、教えて下さい。
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