この劇場はロンドンの旧市街から北東方向の郊外、ショアディッチにあった。ほとんどの他の劇場同様、城壁の外に建てられ、近くには、最初の演劇専用商業劇場であるシアター座(The Theater、1576-96年)もあった。カーテン座の場所は長らく分からなかったようだが、2012年の6月、ロンドン博物館の考古学部門(MOLA)によりその場所が確定され、それ以来発掘が続いていたようである。私も発掘に関して、このブログで以前にも触れている。
ルネサンス期ロンドンの劇場の場所、シアター座とカーテン座は地図の右上 (Wikipediaより) |
発掘が続いているこの地域は、The Stage という名称の総合的な開発地域で、やがて高級アパート、ショッピング街、そして新しい劇場やカーテン座の展示場を含む商業地域となるらしい。
さて、今回の発掘でもっとも衝撃的だった新事実は、これまでカーテン座もグローブやローズ同様、円筒に近い多角形の劇場と推測されており、それを裏付ける当時の絵もあるのだが、発掘してみると、実は長方形であることが分かったのである。シェイクスピアの時代の劇場のうち、屋根がないタイプの大型野外劇場(「パブリック・プレイハウス」と呼ばれる)には次の様な施設がある。年号は開場した年:
シアター座 (The Theater 1576)多角形/円形
カーテン座 (The Curtain 1577) 長方形
ローズ座 (The Rose 1587 ) 多角形/円形(但、改築した後は長方形に近い)
白鳥座 (The Swan 1595 ) 多角形/円形
グローブ座 (The Globe 1599 ) 多角形/円形
フォーチュン座 (The Fortune 1600 ) 長方形
ホープ座 (The Hope 1614 ) 多角形/円形
これまでは、例外的にフォーチュン座が長方形で、その他は基本的に円筒に近い多角形の建物で、カーテン座もその1つだと思われてきた:
当時の絵にあるカーテン座(多角形状の建物)(Wikipediaより) |
しかし、今回の発掘により、長方形タイプが複数在ったことが分かり、改築後のローズも入れると、3つとなる。イングランドのルネサンス劇場は、基本的に円形で張り出し舞台、という従来からのパターンでは考えられなくなったように思う。また、カーテン座は元々借家の連なりを劇場に改築した建物で、劇場としての使用を終えた後は、また借家にもどされたようだ。ガーディアンの記事を引用すると、’a conversion of an earlier tenement – essentially a block of flats – and was later converted back into a tenement again’ ということだ。考えようによっては、新しくゼロから建築された劇場は円筒形になり、そうでない建物は宿屋劇場(inn-theatres)を含め、長方形になると言う事だろうか。
発掘では、最高で1.5メートル位のレンガを積んだ劇場の壁が発見されており、また、立ち見の観客がいた平土間(pit)の部分は砂利が敷かれているとのこと。他の発掘物としては、陶磁器で出来ている、上演で使われたかも知れない笛の破片、骨で出来た櫛、鉛の代用コイン(飲み物の引換券かも知れないという)、そして財布の金具などがあるそうだ。
なお、カーテン座の「カーテン」は、現代の劇場で使われるようなカーテンから来ている名前ではなく、劇場のそばを通っていた通りの名前、カーテン通り(Curtain Road)に由来するそうだ。更に、この名前は、中世にあった修道院の外壁(これを ‘curtain wall’ と言う)から取られている。
詳しくは、ガーディアン紙の記事を参照。
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