6月28日、昔働いていた学校でチョーサーについて1回だけゲスト講義をしたので、先週から、その時に配布するプリントなどを作っていた。その一部として、学生用の参考書リストを作っていたのだが、私の知る限りでは、長い間、日本語で読める手軽なチョーサーの入門書が出てない。新書では、桝井迪夫『チョーサーの世界』(岩波新書、1976)と斎藤勇『カンタベリ物語―中世人の滑稽・卑俗・悔悛 』(中公新書、1984)があるのみで、どちらも、古本では手に入るが、絶版。海老久人、朝倉文市訳のデレク・ブルーア先生の啓蒙書(『チョーサーの世界―詩人と歩く中世』[八坂書房、2010])はあるが、英米の読者に向けて書かれたものだし、翻訳では523頁もあるハードカバーで、値段も6200円以上。図書館で借りるにしても、一般の読者や学生には敷居が高く、私も持っていない。
専門書も、チョーサーの文学に関してまとまって書かれたものは、依然として、斎藤勇、河崎征俊両先生の数冊が主なもの。個別の問題を専門的に扱った論文集(例えばチョーサー研究会の本)などはあるが、学生のレポートや卒論に役立てるには、その学生がすでに授業や上記の入門書などで勉強している必要がある。シェイクスピアでは沢山あるような、一般読者のための総合的な解説書が望まれる。誰か書いてくれないかな。
もしかしたら、私が知らないだけで、一般読者向きの新しい入門書が出ているのかもしれないが・・・。もし適当な本が出てないのなら、個人で書かれても良いし、チョーサー学者はまだ結構いらっしゃるのだから、何人かで手分けして書かれても良いと思う。
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