在野の学者で、私塾でラテン語の講習会を開いている山下太郎先生がキケローの作品を使ったラテン語の独習用リーダーを出した:
山下太郎『ラテン語を読む キケロー「スキーピオーの夢」』(ペレ出版、2017)
私はまだ手に取ったことがないが、文法を一通り学んだ人が、その後、文法知識を固めるために読むように工夫された、とても懇切丁寧な教科書のようだ。その出版にあたり、ラテン語の学習法、そして古典語を学習する意味を自分のウェッブページに書いておられる。
山下先生が特に強調されているのは、ラテン語学習で挫折しないためには、基本文法を完全に覚えてしまおうと思わず、分からない時には調べれば良い、ということ。ラテン語の文法は英語やフランス語以上に複雑な語形変化があり、一気に覚えようとすると嫌になるので、ちゃんと記憶出来てなくともその度に活用表など見て調べれば良いというのである。
古代・中世の歴史資料や思想、ラテン文芸を研究するレベルのラテン語能力を習得するのは確かに非常に困難だ。おそらく大学・大学院で20歳代の大半をラテン語を読むのに費やすくらいの覚悟でないと難しいだろう。言葉としてのラテン語に親しみ、翻訳と比べながら、数行のラテン語の文章を読むくらいなら、大抵の人は2〜3年、途切れずに努力すれば出来る。ラテン語で大事なのは、そしてその他の語学でもそうだが、山下先生が書いているように、とにかくやめてしまわず、少しずつでも続けることだとつくづく思う。とは言え、フルタイムで働いていたら非常に難しい。しかし、忙しい時期も、週1回でも辞書と活用表を見ながら何行か読む、とか、電車の中などで、既に読んで色々と書き込みのある文章を読み返しつつ、動詞や名詞の活用や基本単語を思い出すと言った努力は出来るかも知れない。この教科書は、全ての単語に語釈を付し、訳文も付いているようなので、電車の中とか、仕事の合間など、辞書もない環境でも自習できるようだ。私自身もそうした努力をしていたら、20代から30代にかけてやったかなりの努力を生かせただろうになあ。その後、ほとんどやめてしまい、文法や基本語など、かなり忘れてしまった。
とは言え、私は3ヶ月程前からラテン語の学習を再開した。それ以来相当な時間を使ったので、活用などはかなり思い出したし、辞書を引くのもそれ程苦にならなくなった。研究に役立つとか、スラスラ読めるというレベルに達する時が来るとは思えないが、退職した身の上であるので、趣味、及び、ぼけ防止として、今度は途中で止めず少しずつ続けるつもり。とにかく挫折しないことが大事、と思っている。
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