2018/06/10

道徳劇 The Pride of Life についてのブログ記事

ダラム大学の新進気鋭の研究者、Mark Chambers博士が、14世紀に書かれたと思われる最も古い道徳劇、'The Pride of Life' とその写本を紹介するブログを書いておられるので、紹介の紹介になってしまうが、要点をまとめておく。英語を読まれる方は是非本文を読んで欲しい。特に写本の画像が興味深い。
この劇は中英語作品だが、おそらくアイルランドで書かれた作品。
この劇の唯一の、そして未完の、写本は今は残っていない。元の写本はダブリンの修道院、Holy Trinity Priory の1337-46年の会計簿(account rolls)の一部で、その1ページがこのブログの写真にあるようにぎっしりと細かな文字で書かれている。写本は最高裁などが入る Dublin Four Courts building という建物の中のアーカイブ(Public Records Office)に収納されていたそうだが、1922年、独立後に起きた内乱の戦闘で建物が火災に見舞われ、他の多くの貴重な写本とともに消失した。但し、それ以前に写本愛好家 James Mills がこの会計簿のエディションを出しており、またその本に劇が書かれているページのファクシミリを印刷していたおかげで、今や写本はないがテキストだけは生き残った。写本には、これでもかと言わんばかりに小さな字で無理矢理空きスペースにテキストが書き込まれている。会計簿の記録は1137-46年だが、劇のテキストが写されたのは15世紀と想定されている。
私たちの知る中世文学の多くの作品が今に伝えられたのは単なる幸運な偶然に過ぎないが、本にして読まれることを全く意図されていない演劇テキストの場合、特に、圧倒的多数は失われてしまったのは明らかだろう。'The Pride of Life' は極めて幸運な、後世への贈り物である。
私も留学中に、カンタベリー大聖堂の図書館で、コースワークの一部としてホックリーヴの写本を転写したことがあった。その詩の断片は、カンタベリー大聖堂を持っていた Christ Church Priory の会計簿の写本の末尾のページに書き込まれていた。修道士達がこうした世俗的な文学に関心を持ち、保存したことを示していて興味深い。

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