2019/01/14

中世ダラムのBoy Bishopの記録

REED North-East (Records of Early English Drama) のウェッブサイトで、ダラムの Boy Bishop(少年司教)の記録を取り上げている。

Boy Bishopは、Feast of Fools(愚者祭)同様、中世の大聖堂や修道院などにおける一種の秩序の逆転の祝祭(あるいは儀式と呼ぶべきかもしれない)で、多くの場所では、12月6日の聖ニコラウス(子供の守護聖人)の祝日から12月28日まで行われた。祝祭においては、聖歌隊員の少年(a chorister)が司教に代わって、ミサを除く多くの儀式を行ったり、行列を率いたりする(ウィキペディア英語版の解説)。

低い地位にある者(この場合、聖歌隊の少年)が祝祭の中でひとときの王とか女王、あるいは司教などの高い位の役を引き受けるというのは、中世の祝祭において良く見られる。愚者祭は勿論だが、世俗では五月祭の王や女王もその類型と思われる。中世カトリック社会における季節的な解放感を味わえる儀式だったのだろうか。北フランスで特に盛んだった愚者祭の場合は、祭のエネルギーが横溢した結果、一種の騒乱に転じてしまうこともあったようだが、イングランドではそのようなケースはないらしく、Boy Bishopも静かに平静に執り行われることがほとんどだったようである。

こうした習俗も広い意味で「ドラマティック」な儀式として、E.K. チェンバースなどの中世劇研究者によって研究されてきており、更にREEDの記録にも多くが収められている。私も中世劇の作品と関連づけられないかと色々と考えていた時期があった。ダラムの Boy Bishopの具体的な内容は良く分かってないようだが、期日は昇天祭の祝日(Ascention Day、復活祭の40日後の木曜日)で、筆者のJohn McKinnell教授によると、聖職者達は少年司教に選ばれた少年を先頭にして市内の教会へと行列し、最後にこの少年司教が教会で説教をすることになっていたようだ。

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