2020/03/02

ケント州フォードウィッチにやってきたシェイクスピアの劇団

ツィッターでリンクを見かけたこのオンライン記事にあるフォードウィッチ(Fordwich)という場所は、カンタベリーの郊外、今はほんの380人位の人口しかない郊外の集落。ここに近代初期、シェイクスピアの劇団が公演にやってきたそうだ。この町は、現在は civil parish(世俗教区)と言われる英国最小の行政単位だが、近代初期には自治都市(borough)として認められ、市長を選んでいたようだ。カンタベリーやアッシュフォードを流れ英仏海峡にいたるスタウアー川(The Stour)の川辺にあり、船着き場として栄えていたらしい。

フォードウィッチの市長の出納簿(Mayor's Accounts)は1559年以降のものがケント州公文書館に保存されている。そのうちの1604/5年の記録に次のように書かれている:

   To the kinges players vjth of October    x s.

つまり国王の劇団への謝礼として公金から10シリングを支出したわけだ。King's Playersというのは、シェイクスピアが在籍したKing's Menだろう。つまりこの劇団は1605年10月にカンタベリー郊外のこの町で旅公演をしていたわけである。記録はこれだけなので上演場所や演目など、その他の事は全く分からない。しかし、こうした町で人々の集まる大きめの建物というと教会かギルドホールくらいだから、教会で興業が行われた可能性は高い。この市長の出納簿からの抜粋は、REED (Records of Early English Drama) Kent: Diocese of Canterbury, Part 2, p. 602に記載されている。

出納簿からのその他の演劇上演の記載を見ると、この小さな町に時々首都の劇団が旅公演に来ていたのが分かる。例えば、Earl Leicester's Men, Lord Stafford's Men, Lord Essex's Men, etc. 面白いのは、海外からの(?)King of Bohemia's Players (1620/1)というのも来ている。またThe Children's Players of Queen's Chapelという有名な首都の子供劇団も1590/1に14シリング4ペンスの謝礼を受けとっている。

自治都市であったとは言え、こうしたプロの有名劇団が小さな町であるフォードウィッチに何故来たのか、不思議ではある。直ぐそば(歩いて1時間半程度だろうか)にはカンタベリーという主要都市があったので、そこからも人々が劇を見に来ただろうとは推測するが・・・。

0 件のコメント:

コメントを投稿