昨年のブログ(8月11日)で「オンライン授業の準備」という文章を書いた。昨年前半のコロナウィルス流行を受けて勤めている非常勤先の大学がほぼ入構禁止となり、授業も全面的にオンラインに移行したのを受けて、私も四苦八苦した様子を書いていた。あの文章では前期のことを書いたのだが、後期も大体同じ感じで進めた。但、前期にWebexというZoomに似たソフトで行ったリアルタイムでの質疑応答のための補講は自由参加としていたが、学期の終わりにはほとんど受講者がいなくなったので、後期はやらなかった。もし希望が多ければやろうとは思っていたのだが、学期始めに学生にリアルタイムの質疑応答の時間を望むかアンケートを取ったところ、ほとんどの学生が、無くて良いか、あっても多分出席しないという反応であった。
私が担当している講義は前・後期1科目の2科目だが、英文学史を扱っていて、前期は中世から17世紀のミルトンの頃まで、後期は18世紀から第2次世界大戦後の文学まで講義する。従って、後期は近代後期の文学で、デフォーやスウィフトに始まり、ディケンズやブロンテ姉妹他の19世紀の大小説家など、長編小説が多い。前期の授業から学生に沢山の資料をコピーし、スキャンしてファイルで配布していたが、後期は小説の翻訳を一部抜粋して配ることが多かった。小説は叙情詩などと違い、自分で文章を入力したり、数ページをコピーした程度ではあまり意味がない。やはり何十ページ単位で読んでもらわないと特徴が解りにくい。従って、後期は一作品について、文庫本の翻訳を50ページくらい(見開きで25枚くらい)、コピーすることが多かった。コピーした後はマージンをハサミで切り、新しい紙に糊で貼り付け、しばしば最初にイントロダクションみたいな文章も付けて、スキャナーで読み込むのだから、結構時間がかかる。他に、文学史の本の抜粋とか、歴史の本の抜粋も配るから(これらは2〜5ページ程度だが)、資料の準備だけで丸一日以上かかる週が多かった。
前期同様、学生のホームワークには個別にコメントを返し、毎週のリスポンス・シートへは、全体としてのフィードバックを書いてLMSで配布した。学生の中にはこうしたフィードバックを高く評価してくれた者もいたようだが、厳しい事も書くし、とにかく毎週何か出さないといけないので、履修者は18名だったが、途中で挫折した学生も何名もいた。特に、それまでに単位をかなり落としていたり、編入生や教職履修者だったりして、履修科目数が他の人より多い学生にとっては辛かったようだ。但、教職履修者は熱心な学生が多いので、それでも何とか最後まで続いたと思う。
私はたった1科目しかやってないが、毎週、平均すればこの科目のために20時間以上使っただろう。昔読んだ作品を思い出したり、時には講義内容を向上させるために、詩や小説などの作品自体や参考書を読んだりする時間もあるから、実際はもっと長い時間をかけている。とても現役の専任教員時代には出来なかっただろうし、非常勤でも何科目もやっていれば不可能だっただろう。この他には家事をしたり、散歩やテレビを見たりして無為な老後を過ごしている私としては、一種の打ち込める生き甲斐になっていたなと今は思う。ほとんど収入にはならないし、対面授業の場合は通勤時間がとても長いのだが、こういう仕事を与えて下さった先生にとても感謝している。
2021年度の授業が来月から始まる。非常勤先大学からは、100人単位の大人数の講義を除き、原則対面授業を行って欲しいという通知があった。従って、私も、ちょっと怖くはあるが、対面授業に戻るつもりで準備をしている。講義は音声ファイルの配布ではなく、教室で実際に私が話す事になるが、毎週ファイルで資料を配付し、学生にコメントなどを書いて提出させるというやり方は今後も続けることにした。
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