2010/08/23

"Antony and Cleopatra" (Royal Shakespeare Company, 2010.8.19)

かなり変わったクレオパトラが意表を突く。
"Antony and Cleopatra"

Royal Shakespeare Company公演
観劇日:2010.8.19  19:15-22:35
劇場:The Courtyard Theatre, Stratford-upon-Avon


演出:Michael Boyd
脚本:William Shakespeare
セット:Tom Piper
照明:Wolfgang Göbbel
音響:Andrew Franks
音楽:James Jones
衣装:Sarah Bowern

出演:
Triumvirs:
Darrell D'Sylva (Mark Antony)
John Mackay (Octavius Caesar)
Sandy Neilson (Lepidus)

Cleopatra and her followers:
Kathryn Hunter (Cleopatra)
Greg Hicks (soothsayer)
Samantha Young (Iras)
Tunji Kasim (Mardian)

Sophie Russell (Octavia, Octavius Caesar's sister)
Clarence Smith (Pompey)

☆☆☆ / 5

この公演は、何と言ってもKathryn Hunterという、非常に個性の強く、インテリジェントな女優がCleopatraとどう取り組むかが多くの人の関心の的だろうと思う。私は、この劇は読んだことも見たこともなかったので、いつもに増して台詞が理解困難だった。一応の粗筋は、公演直前にプログラムに書いてあるものをざっと読んだ。Cleopatraというと、やはり傾城の美女という先入観念がある。それを、極めて小柄で、率直に言って美しくもなく、歩くにもやや足を引きずるようにして歩き、更にもう若くない、しかし天才的な女優とも見られるHunterが何とか観衆を納得させる演技が出来るかどうかが見どころ。この作品の公演は始めて見る私は、やはり看板通りの美女で見たかったというのが正直な感想。巧みな表情の変化や台詞で、Antonyを見事に操る才女であることは良く表現されていたし、かってのVivian Lee, Peggy Ashcroftなどがやった役について、意表を突くことは出来たとは思うが。

ストリーの大枠: ローマ帝国を治めていた3人の執政官(三頭政治)の1人Mark Antonyが、エジプトの女王Cleopatraの巧みな手管により誘惑されて政務をおろそかにし、その隙に、Pompeyが反乱を起こす。他の2人の執政館、Octavius CaesarとLepidusは、Caesarの姉、OctaviaとAntonyを結婚させ、政治の安定を図る。Pompeyとの間には休戦が成立するが、その後またCaesarとLepidusはPompeyと戦い、敗れ、Antonyはエジプトに避難。彼に遅れてエジプトにやって来たCaesarはAntonyと戦うことになり、Cleopatraに気を取られたAntonyは大敗を喫する。Antonyが自分を恨んでいると聞いたCleopatraはAntonyの後悔を促すためか、自分が自殺したという誤報を伝えさせる。それを真実と信じ込んだAntonyは悲しんで自殺。Caesarはエジプトに進軍し、Cleopatraを捕虜としてローマに連行しようとするが、恥辱を受け入れたくないCleopatraも自殺する。

コスチュームはモダン・ドレス。

Darrell D'SylvaのAntonyは特に問題はなかったが、彼はスター・クオリティーを感じさせるような俳優ではないので、主役としては今ひとつと感じた。大変印象に残ったのは、冷たく計算高い、ビジネスマンのようなCaesarを演じたJohn Mackay。個人的には、これまで見たことのないこの劇を見ることが出来て良かった、という一夜だった。

続けて何本も劇を見ると、1本1本のインパクトが薄れがちなのは残念。この劇のことは、健忘症の私は、数日後の今、もう大分忘れてしまった。でもKathryn Hunterの変幻自在さは印象に残っている。ただ、それがCleopatraのキャラクターとして自然に表れるのではなく、この俳優のクレバーな演技として浮き上がってしまったところに無理が出たと思う。この次の日に見た"King Lear"のフール役での素晴らしいHunterと比べると、やはりこのCleopatraは適切なキャスティングとは思えないなあ。


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2 件のコメント:

  1. ライオネル2010年8月23日 19:57

    4月にRSTでこの舞台を見た、8人グループの方々は、キャサリン・ハンターの演技の感触が合わなかったようで、不評でした。
    ハンターの演技って独特ですものね。
    この芝居って、長くて場展が多くて・・・・・
    そうだからこそクレオパトラは美人のほうがいいような気がしますね。

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  2. ライオネル様、コメントありがとうございます。Hunterの出来が良い悪いとかでなく、このキャスティングを好むか好まないか、個人の趣味の問題でしょうね。今日会った演劇ファンのイギリス人夫妻は結構気に入ったみたいですが、これまでに色々とこの劇の公演を見ているので、新鮮さを感じたみたいでした。私は初めてなのであまり風変わりなのは遠慮したかったですね。Hunter自身はとても好きな役者さんですけど。Yoshi

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