2014/08/14

"Richard III" (Trafalgar Studio, 2014.8.13)

主演俳優が休演でがっかり

☆☆ / 5

劇場:Trafalgar Studio, Studio One
2014.8.13  19:30-21:50 (含む, 1 interval)

演出:Jamie Lloyd
デザイン:Soutra Gilmour
照明:Charles Balfour
音楽と音響:Ben and Max Ringham

配役:
Richard III: Philip Cumbus (understudy)
King Edward IV / Bishop of Ely: Paul McEwan
Buckingham: Jo Stone-Fewings
Stanley: Paul Leonard
Hastings: Forbes Masson
Clarence / Lord Mayor: Mark Meadows
Catesby: Gerald Kyd
Tyrrel: Simon Coombs
Richmonnd: Joshua Lacey
Queen Margaret: Maggie Steed
Lady Anne: Lauren O'Neil
Queen Elizabeth: Gena McKee
Duchess of York: Gabrielle Lloyd


この公演、ジェイミー・ロイドという若い売れっ子の演出家が演出していることもひとつの注目点だが、なんといっても、BBCの『シャーロック』でワトソンを演じるマーティン・フリーマンが主役のリチャードを演じて、人気を集めている。切符はほぼ売り切れだろう。ところが、昨日はそのフリーマンが体調不良でお休み。私はフリーマンのファンではないので、彼を見られなくても構わないが、突然出演することになる代役(アンダースタディー)は、如何に上手い人でもセリフを間違わずに無難にこなせれば上出来であり、最初からその役を受けて稽古を重ねている役者の演技とは比べ物にならないし、演出家の意図を十分に表現できるはずもない。今回、リチャードの役はPhilip Cumbusという若い俳優がやったが、セリフは全く間違えず、アンダースタディーの責任を見事に果たした。しかし、個性の乏しい教科書的な演技で(無理もない!)、脇役よりも目立たないほどであり、ガッカリした。時差ボケもあって、本当に眠り込むことはなかったが、終始かなり眠かった。 もちろん、俳優も病気になるし、休む時があるのも仕方ない。これもライブ・シアターの特性だからねえ・・・。

現代のセッティングだが、ブラウン管テレビやマニュアルのタイプライターがあったり、古めかしいデザインの固定電話が置いてあり、衣装から見ても、1970年代前後を意図しているのだろうか。次々と変わる指導者、政治の変転、背後で常に進行する権力闘争、といったこの劇と現代政治の共通点を意識させようという演出だろうか。しかし、特定の国際情勢とか独裁者に結び付けるようなモチーフは見当たらず、その他でも特に新鮮さは感じられなかった。

ステージは、舞台の奥にひな壇のような観客席を追加して、演技する場所を前後からはさむような形にしている。ステージ上には、大きな長い机を2つ置き、その前に数脚づつ事務用椅子が置かれている。つまり会議室のような風景。王の椅子だけがやや大きくて肘掛がついているが、玉座と言えるようなものではない。現代の政府で閣議が行われる部屋、というところだろう。このセットはインターバルの後も全く変わらない。

特に奇抜なところのない、オーソドックスな演出だと思う。それだけに俳優の演技が重要と思うが、主演俳優の休演で、気の抜けた公演になってしまった。フリーマンが出ていたら、全く違った感想になったかもしれない。また、実質2時間半程度にカットされているせいだろうか、マーガレットやエリザベスなどの魅力的な女性の出番がいま一つ目立たないのが残念だった。但、私の好きな女優であるGena McKeeには満足。BuckinghamのJo Stone-Fewingsは印象に残ったが、残りの貴族の男性たちは、十分に特徴が出ていなかった気がする。ケイツビーやティレルもさほど凄みはない。リッチモンド役は元々は、今回主役をやったPhilip Cumbusがやっていたので、アンダースタディで、これも影が薄かった。やや驚いたのは、リチャードが自らLady Anneを殺したこと。

2 件のコメント:

  1. ライオネル2014年8月19日 9:46

    Yoshiさま
    短い期間の公演なのに、主役が休むことがあるんですね。まあ、タイトルロールは責任がかかってきますもの・・・・・・・体調不調もしかたないですが・・・残念でしたね。
    私もデビット・テナントが”ハムレット”を腰痛で休んだ時は、がっかりでした。
    チケットを抑えるのに、すごい動力を使ったのに・・・・・
    RSCの公演期間は長いので、致し方ないかと思うけど・・・・・私もマーティンの”リチャードⅢ”観たかったなあ~ 

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    1. ライオネルさま、コメントありがとうございます。ついてなかったですが、私は特にフリーマンを見たくてチケットを買ったファンではないので、まだ失望はそれほどではないです。グローブ座で『テンペスト』を見た時には、休演のため、他の役者が紙に書いたセリフを読む場面もあったのを思い出します。

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