Ian Rankin, "The Falls"
(2000; Minotaur Books, 2010) 467 pages.
☆☆☆ / 5
毎日寝る前、眠くなるまで数ページ、いや2、3ページの夜も多かったか、その位ゆっくり読んでいたので、もういつ読み始めたのかも思い出せないくらいだが、最後は結構息詰まる展開もあり、読み終わってみるとかなり面白かった。但、途中はかなりスローな展開というか、停滞した感じというか、読むのがとても遅い私には細かい字で467ページというミステリは長すぎ。
Rankinの刑事、John Rebusは、連合王国の刑事物の主人公としては、Ruth RendellのInspector Wexford、P. D. JamesのChief Inspector Adam Dalglieshと並ぶ、最も有名な刑事のひとりではないだろうか。この小説も、いつもながらの手練れの技で、Rankinを幾つか読んでいる人を失望させない。今回の事件は、金持ちの銀行家の一家、Balfour家の娘、Philippaの失踪で始まる。手がかりは乏しく、唯一奇妙な遺留品としては、小さなミニチュアの棺が現場近くで発見されたこと。ところが過去の未解決失踪事件や殺人事件でも同様の玩具のような棺が発見されていたことが分かり、Rebusは連続殺人事件ではないかとの疑いを抱く。もうひとつの手がかりは、Philippaのパソコンに送られていたQuizmasterという匿名の人物からのメール。このメールを追っていくとPhilippaは失踪する前にこのQuizmasterが作り上げたゲームに参加していたことが分かる。棺はRebusが、そしてQuizmasterのゲームはJohnの変わらぬ相棒、Siobhan Clarke刑事が追いかける。QuizmasterはPhilippaの失踪後も謎のメールを送り続け、ゲームのキーを与えて警察を挑発する。Siobhanは段々このゲームに深入りしていき、寝ても覚めてもゲームのことが頭から離れなくなってしまう。一方、Rebusは棺の由来を調べるためにスコットランド博物館の学芸員のJean Burchill博士の意見を聞くが、その縁で彼女と親しくなる。
この小説、警察関係者以外にあまり印象的な人物がいないのがやや不満と言えば言えるだろうか。Balfour家やその周辺の人々に、仮に悪役であってもあまり深みある個性が感じられない。しかし、警察内部の人間関係がかなり良く書き込まれていて、その点には興味を引かれた。特に上役のGill Templer、キャリア指向の強いEllen Wylie、そしてRebus的な一匹狼の生き方と、警察内での出世を目ざすTemplerやWylieのような生き方の間で迷うSiobhanの姿が面白い。
後に余韻が残る小説ではないが、読んでいる間はかなり楽しんだ。色々とエジンバラの地名が出て来るが、John Rebusシリーズを読んでからエジンバラを旅すると楽しいだろうな。
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