2016/01/15

アラン・リックマン、亡くなる。

1月14日、イギリス人俳優、アラン・リックマンが癌で亡くなった。先日亡くなったデヴィド・ボウイ同様、69才だった。

彼は素晴らしい古典的な俳優であるのは勿論、演出家としても力量のある人だった。残念ながら、私は彼の名演を直接ステージは見ていないと思う。彼は、RADAを出た後、バーミンガム・レパートリー劇場やロイヤル・シェイクスピア・カンパニーなどで、古典劇に多く出演して、俳優としての技術を磨き、また、舞台愛好者の間では良く知られた人だったようだ。壮年になってから、ブルース・ウィルス主演の『ダイ・ハード』やケビン・コスナー主演の『ロビン・フッド』などのハリウッド映画の悪役でも有名になり、その後、ハリー・ポッター・シリーズで、世界的な大スターとなった。私は、彼の好演で評判を取ったカワードの『プライベート・ライブス』 (2001) の頃、イギリスに居て、そうしようと思えば見ることは可能だったのだが、残念ながら出かけておらず、大変後悔している。

しかし、彼の演出したストリンドベリの戯曲『債権者』(Creditors)を、2008年の秋、ドンマー・ウェアハウスで見ることが出来たのは幸運だった。しっかりした俳優の演技に支えられた台詞劇だったという印象が残る。リックマンは、この劇で主演したトム・バークの名付け親だったそうだ。

私個人は、彼の出た映画はあまり見ていないが、アイルランド独立運動の英雄を描いた映画『マイケル・コリンズ』(1996)で、後に大統領になるエイモン・デ・ヴァレラを演じたのが強い印象に残っている。

彼は、蜷川の『タンゴ、冬の終わりに』のロンドン公演にも、リンゼイ・ダンカンと共に主演している。また、小さなフリンジの公演も頻繁に見に行って若い俳優を励ましたり、貧しい俳優を支援する団体を運営するなど、演劇人を育てることに熱心だった。そうした彼の演劇人としての活動について、マイケル・ビリントンがふり返っている。

彼は、個人生活では、元労働党所属の国会議員で、ロンドン郊外にあるキングストン大学の経済学の講師でもあるRima Hortonと結婚していた。結婚したのは2012年だが、ティーン・エイジャーの頃からのパートナーだったそうだ。更に彼自身も労働党党員で、リベラルな文化人として積極的に活動や発言をする人だったようだ。彼の友人だった、ガーディアンのチーフ・エディター、キャサリン・バイナーが、彼の人柄を述べている

人気があるとか、映画界のスターだとか言うことを越えて、彼は本当にすぐれた技能を備えた演技者であり、また多くの人に愛されたリベラルな文化人だった。

2 件のコメント:

  1. ライオネル2016年2月2日 16:38

    私も、アラン・リックマンの舞台は、ピンターが亡くなった時の、ナショナルシアターでの追悼舞台で、リーディングしたのを聞いたのみです。
    「債鬼」は見ました。なので、ドンマーでも姿をみましたし、イアン・マッケランとは友人なので、彼の「キング・リア」を奥様と一緒に観に来たり、ジュード・ロウの「ハムレレット」でも姿を拝見しました。板の上より、観劇に来ていた姿の方がよく見ました。
    こんなに早く逝かれるとは残念でありません。

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    1. ライオネルさま、コメントありがとうございます。俳優でも他人の舞台はほとんど見ない人もいるようですが、彼はよく舞台を見に来ていたみたいですし、若い演劇人の応援にも熱心だったようですね。惜しい方を失ってしまいました。

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