2012/03/20

'The Pardoner's Tale'の木彫パネル

先日Museum of Londonに行って、展示品の写真を沢山撮り、今整理しているのだが、その中でも面白いものを一部紹介していきたい。但し、下手な写真で済みません。今日の写真では、真ん中に、ガラスケースの枠の影が黒く入ってしまっています。

さて、今回は木彫の板。1410年頃のものらしい。結構良く知られたパネルではないかな。私はどこか本の挿絵で見たことがある。これはもともと家具のチェストの側面だったようだが、1枚のパネルだけが展示されていた。描かれている図は、チョーサーの'The Pardoner's Tale'(「免罪符売りの話」)。『カンタベリー物語』の中でももっとも人気があり、有名な話のひとつ。パネルの全体は:


多分、チェストの側面すべてに(あるいは上も)彫り物がしてあり、物語が順番に描いてあったのだろう。このパネルは、物語の終わりのほうの3つのシーンを描いている。3分割して見てみよう。

まずは、町に食料を買いに行った若者の一人が薬屋(apothecary)で、宝の番をするために残してきた仲間を毒殺するための薬を買うところだろう。
お兄さんと薬屋の大きさの違いが面白い。

次は町から戻ってきた仲間を、残っていた2人が宝の分け前を増やすために、襲って殺すところ。短剣で頭のあたりを刺している。怖いねえ。


 そして最後は、宝物をを2人でせしめて大喜びの若者2人が、今殺したばかりの仲間が買ってきた毒の入った飲み物を飲もうというところだろう。
手前にある長方形はテーブルで、カップやナイフ、それに皿の役割をするtrencherという木の板が見える。謂わばテーブル用のまな板。trencherは固いパンで作られていることもあり、食事の後は肉汁などのしみこんだ皿ごと食べてしまったり、貧しい人に恵んだりしたらしい。足元にいるのは犬でしょうね。

これだけ見ても、パネルの絵の元になったお話が、貪欲を戒める教訓話だと分かる。このチェストに、金銀とかお金とか、絹の織り込まれた贅沢な衣類とかしまってあったとしたら、それこそ自己矛盾して、おかしいな。チェスト自体が非常に手の込んだぜいたく品であり、相当なお金持ちの所有物だったろう。

0 件のコメント:

コメントを投稿