2013/06/03

"Longing"(ハムステッド劇場、2013年3月6日)


(もう一本、春先にロンドンで見た劇です。)

久しぶりにハムステッド劇場に行ってきました。見たのはは"Longing"という、チェーホフの短編小説のアダプ テーション。脚本としては新作です。『3人姉妹』とか『桜の園』とよく似た素材。上流階級の一族が没落し、ブルジョワに屋敷を買い取られる。生活 力の無い夫、現実から眼を背け、逃避的な行動に出るインテリ、逞しいが粗野なブルジョワ資本家、といったチェーホフにお馴染みのモチーフがそのほかにも一 杯です。

チェーホフの大傑作、『かもめ』とか、『三人姉妹』ほど洗練されていなくて、やや荒削りと思いますが、十分に楽しめ、満足していま す。日本でもやると受けるだろうな、と思います。

ロバーヒン(『桜の園』で農園を買い取るブルジョワ)よりもずっと無神経で、鈍感なブルジョワ資本家のドルジコフやら、父親に増して粗野な彼の娘クレオパトラ(変な名前!)やら、そう いったところがユニーク。上流階級の人たちはずっと弱弱しく、時代の変化に迎合し、ブルジョワ資本家に取り込まれるように描 かれています。上流一家の主人セルゲイは、無能で能天気で酔っ払い。財産を浪費し、先祖代々の家屋敷を売り渡し、ついにはドルジコフに雇われた農園支配人に成り下がりますが、それが寧ろ性に合っているようで す。彼の妻ターニャを演じたナターシャ・リトルが素敵でした。もちろん、名優タムシン・グレイグも良かったです。セルゲイを演じたアラン・コックスは、だらしない不器用な男を上手く演じて説得力がありました。彼はフィンバラ劇場の"Cornelius"に主演していたのですが、その時にも大変楽しめる演技を見せてくれました。

オフウエストエンドの劇場としてはかなり立派なセットで、きれいだったです。ハムステッド劇場は、エドワード・ホールが芸術監督になってから、秀作が目立つようですね。

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