2013/06/03
Githa Sowerby作、"The Stepmother"(Orange Tree Theatre、2013年2月21日)
(長い間ブログを書かずに居た間に、2月から3月にかけてロンドンに行っておりました。その時4本か5本劇を見たのですが、そのうち2本についてMixiに感想を書いていたので、遅くなりましたが、そのまま載せておきます。)
ロンドン郊外リッチモンドの小劇場、Orange Tree Theatreで観劇。女性脚本家, Githa Sowerby によって1924年に書かれた、フェミニスト劇と言ってよい作品。Sowerbyは児童文学作家として活躍した人で、バーナード・ショーなどが中心になってやっていた穏健な社会主義団体、ファビアン協会の会員だったそうです。社会的な主張の面白さ に加え、大変しっかりとつぼを押さえたウェルメイド・プレイ。イギリス版イプセン、または、良質のラティガンといったところでしょう か。妻が相続した遺産を妻には知らせずにバカな投資につぎ込んで、破産してしまうという夫に利用された働く女性の話です。第一次世界大戦が終わって少し経った頃の時代に、既に働く女性を取り上げていた点に新鮮さを感じました。イプセンの女性たち と違い、主人公のロイスはあまり逞しくなく、その点ではやや不満が残ります。しかし、一旦結婚すれば妻の財産も労働の成果も夫のものなるという、当時の男性社会の専横さを鋭く告発した劇です。イプセンなどと比べるとやや小粒なのは、善悪がはっきりしすぎ、けなげな女性と横着な夫という図式が分かりやすすぎることでしょうか。そういった点では、ビクトリア朝的な古めかしさを感じさせます。しかし、説得力は十分にあり、観客からはため息やらブーイングやらが度々出ていました。
俳優は皆秀逸。特に憎まれ役の夫Eustaceを演じたChristopher Ravenscroftの憎憎しさの表現が素晴らしかった。
それにしてもこの劇が12ポンド(1600円くらい)で見られるなんて贅沢。ロンドンのフリンジは充実している。
良い作品なので、日本語に翻訳し上演されても大いに楽しめるでしょう。
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