2013/07/28

WOWOWのドラマ「ハリーズ・ロー、裏通り法律事務所」('Harry's Law')



WOWOWでやっている連続ドラマ、「ハリーズ・ロー、裏通り法律事務所」が気に入っている。

文字通り弁護士もの。「ペリー・メイソン」などのような、昔から良くある法廷ドラマ。そして私は法廷を舞台にしたドラマや映画が大好き。丁々発止のやり取りが楽しい。このドラマ、主演のキャシー・ベイツを始め、芸達者が揃っていて、台詞のやり取りを聞いているだけで楽しい。私は普通アメリカのドラマはあまり見ない。刑事ものはけばけばしすぎ、リアリティーに乏しいか、暴力シーンばかり目に付いて見たくないし、そのほかのアメリカドラマもあまりにもつくりもの臭い。ところが、このドラマだけは毎回失望しない。何故だろう。

ベイツ演じる主人公のベテラン女性弁護士ハリー(ハリエットの愛称)・コーンは、正義感の強い弁護士ではあるが、護身用の銃を身近に置き、自分の身は自分の身で守る、概して政府の市民生活への介入は少ないほうが良いという伝統的な共和党員のようだ。人種とかジェンダーの問題ではリベラルだが、決していわゆる人権派弁護士ではなさそうだ。そういう中道に位置する彼女が、やはり色々な意見を持った仲間達や、裁判官、検察官達と共に、毎回試行錯誤しつつ、時には間違いを犯しつつも、色々な社会問題の答を裁判を通じて見出そうとする。どの登場人物も善悪とか、良心的かそうでないかとか、一面的に描かれていないところが良い。裁判の結果も、明らかにハリーの弁護に正義があると思われる訴訟で敗れたり、その逆だったりすることもあり、また、そもそも、ほとんどの裁判において、100パーセント正義とか不正であるとか断言できないというむつかしさが描かれている。娯楽番組なので、弁護士たちの恋愛とか、彼らの家庭問題とか、周辺的なエピソードも沢山あり、「アメリカの法曹とは・・・」とお勉強するような番組ではないんだけど、娯楽番組の枠内で、アメリカの社会問題とか、法律が市民生活でどう生きているのか、あるいは、生かされてないか、いくらかでも学べるのではなかろうか。

私が特に面白いと思うのは、陪審のいる裁判と、居ない裁判の違い。前者は英米の色々な法廷ドラマでもお馴染みで、たとえば「12人の怒れる男」など有名だが、後者は、a magistrate's courtかなと思う。治安判事の裁判である。判事が一人で判断し、判決を出す。したがって、どういう判事に当たるかで、判決も大きく変わりそうで、それを踏まえて弁論の戦術を立てるようだ。どちらの場合も、テレビドラマという性格もあり現実の裁判を反映しているかどうか分からないが、弁護士や検事の説得力、つまりどのくらい雄弁(oratory)をふるえるかでかなり結果が左右される。私は裁判の傍聴の経験がないが、日本の裁判の弁論はどうなんだろう。

今現在やっているシリーズは再放送の第一シリーズのようで、ウィークディに毎日放映していて、録画してぼちぼち見ている。既に見た第二シリーズと比べて、地元の町の人々とのつながり、弁護士の助手をしている黒人の若者マルコムの成長、事務所の周辺で起こる若いギャングのトラブルの対処、ハリーの事務所が建物の2階ではなく、靴屋の店舗の一部となっていることなど、ローカルな人間ドラマが多い。一方第二シリーズ、「続ハリーズ・ロー、裏通り法律事務所」では、そうしたローカルな話題が減って、より一般的な法廷番組になっていた。俳優も新しく2人がレギュラーになり(オリヴァーとキャシーという新キャラクター、この2人はアメリカでは良く知られた俳優が演じていると思う)、その代わり、若いマルコムや靴屋のマネージャーのお茶目なジェナがほとんど出なくなったのは残念。第一シリーズが好評だったので、ギャラが高いが知名度のある俳優でグレード・アップしたのかな。法廷ものとしては第二シリーズのほうが緊迫感があるが、最初のシリーズの身近な、サブタイトル通り「裏通り法律事務所」の雰囲気も捨てがたい。

洋の東西を問わず、テレビ・ドラマのヒーロー、ヒロインは、若いか、せいぜい40才前までくらいのスタイリッシュな美男美女というのが普通だが、この番組は1948年生まれのベイツ演じるハリーが主人公で、準主役級で彼女の忠実な協力者のトニー・ジェファーソンを演じるクリストファー・マクドナルドも1955年生まれ。ふたりの間の世代に位置する私には、共感しやすい嬉しい配役。

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