2015/04/09

【英・米映画】『クレアモント・ホテル』 ”Mrs Palfrey at the Claremont”

『クレアモント・ホテル』 ”Mrs Palfrey at the Claremont” (英・米映画 2005年)

監督:ダン・アイアランド
脚本:ルース・サックス

出演:
ポールフリ夫人:ジョーン・プラウライト   
ルードヴィック・メイヤー:ルパート・フレンド   
アーバスノット夫人:アンナ・マッセイ   
オズボーン氏;ロバート・ラング   
グェンドリン:ゾーイ・タッパー   
ルードヴィックの母:クレア・ヒギンズ   

☆☆☆ / 5

2005年に英米合作で製作されたようだが、日本では2010年に岩波ホールで公開。私は先日WOWOWで放映されたので見た。地味で慎ましい佳作、というタイプの作品。主演は、最近はお目にかからないが往年の大女優で、ローレンス・オリヴィエの最後の奥様だったジョーン・プラウライト。

ロンドンの小さな、古めかしい長期滞在者用宿、クレアモント・ホテルにプラウライト演じるポールフリ夫人がやってくるところから映画は始まる。彼女は70歳弱くらいか。かっては愛する夫アーサーのために、そしてその後は娘のために生きてきたが、今やっと自分一人、気ままな生活を楽しもうとロンドンにやって来た。しかし、やって来るはずの孫デズモンドからは何週間経っても連絡がなく、他に尋ねて来る人も知り合いもおらず、ぽつんとホテルの食堂で一人きりの食事をするのみ。しかし、同宿の他の客とは言葉を交わすようになる。彼らもポールフリー夫人同様、年配の孤独な老人たち。ある時、彼女は道で転んで膝を打つが、その時に駆けつけて助けてくれた26歳の青年ルードヴィックと親しくなる。貧しい小説家志望のルードヴィックも、母とは疎遠になっており、他に家族はおろか、ガールフレンドもおらず、街角で弾き語りをしては日銭を稼ぐ根無し草の毎日。ポールフリ夫人はそのルードヴィックをホテルの夕食に招くが、同じホテルに住んでいる人々が彼の事をポールフリ夫人の自慢の孫、エドモンド、と勘違いしたからややこしいことに。ルードヴィックはそれから他人の前では彼女の孫を演じ続けることになるが、やがて本当の祖母と孫の間にあるような愛情がふたりの間に生まれていく。

というような、いかにも心温まる、寂しい老人と社会の主流から落ちこぼれた若者の交流の話。よくありそうな話で、かなり陳腐と言えるかも知れないが、それでも充分楽しめた。私のような、すっかりくたびれ、知人・友人も少ない老人には、共感してほろりとくるところもあるし、クスッと笑えるところも結構あった。テンポがゆっくりで、大して大きな事件も起こらず、退屈する場面もあるが、その古風なのんびりしたところが魅力でもある。2005年制作なのに、随分昔のイギリス映画を見ているような錯覚に陥るが、原作が1971年出版なので、恐らくそのくらいの年代の出来事のように作ってあるのかな。

原作はエリザベス・テイラーの小説だそうだが(俳優ではありません)、こういう長期滞在ホテルを舞台にしたお話、イギリスの映画、演劇、小説などでは良くあるのではないだろうか。すぐ思い出したのが、テレンス・ラティガンの作品、『それぞれのテーブル』(Separate Tables)や、『炎の道』(Flare Path)など。特に『それぞれのテーブル』はこの映画に似た雰囲気を持っている。ホテルという、人々が次々と訪れては去って行く場所、そして食堂に集まっての交流、しかし、個室に入ってしまえば、何をする人か分からない。更に、ホテルで他の客に見せている顔は、本当は仮面にしか過ぎなかったりと、ホテル、特に長期滞在型ホテルは、人生の変転を映し、ドラマを生む場所だ。

プラウライトも良いが、まわりの脇役が光る。特に、ポールフリ夫人同様ホテルに長く住んでいる他の女性たちが実に個性的で人間味溢れた造形で、見応えがある。ルードヴィックを演じるルパート・フレンドと、後に出来る彼のガールフレンド、グウェンドリン役のゾーイ・タッパーも好感が持てる演技。

しかし、世界中からおびただしい観光客が集まるロンドンに、今でもこんなのんびりしたホテルがあるか疑問。あっても、うらぶれたホテルの冴えない部屋でも宿賃が途方もなく高価で、とてもポールフリ夫人には手が届かないと思うけど。

DVDも出ています。

0 件のコメント:

コメントを投稿