2017/11/17

初期イギリス演劇におけるプロンプターの存在

先日から読んでいるバターワースの本で、初期イギリス演劇におけるプロンプターの存在を確認したので、メモしておこう。('Staging Conventions in Medieval English Drama' pp. 136-37)

1602年にRichard Carewが出版した'Survey of Cornwall' という本によると、コーンウォールの野外円形劇場(amphitheatre)で上演されたコーンウォール語の奇跡劇(miracle play)においては、俳優は台詞を覚えてなかったそうだ。その代わり、 'the Ordinary' と呼ばれている役割の人物が、手に本を持って俳優達の後ろで動き回り、彼らに小声で台詞を言ってまわったらしい('telleth them softly what they must pronounce aloud')。中世劇と言うには遅すぎる例ではあるが、ステージ上にいて台詞を教える演出家、あるいはプロンプター、の存在がはっきり分かる文献だ。演劇史の本に必ずと行って良いほど出てくるフーケの絵「聖アポロニアの殉教」もこうした場面を描いているのだろうか。

この例は今で言うドラマティック・リーディングに近いものかもしれない。しかし、中世や近代初期の記録には、台詞を暗記することの重要性を示すものもたくさんあるので、台詞を覚えずに演技するのが普通だったとは思えない。プロンプターに当たる人物がかなり使われたにしても、主に台詞を忘れた俳優を助けるための役割であったのではないだろうか。

フィリップ・バターワースは1580年代の二つの書物の例を挙げ、この頃、俳優に台詞を教える役割の人物が 'monitor' とか、あるいは既に 'prompter' と呼ばれていたことを示している。そのひとつ: 'He [a monitor] that telleth the players their part when they are out, and haue forgotten: the prompter, or booke holder' (Iohn Higgins's translation of Hadrianus Junius's 'The Nomenclator, or or Remembrances of Adrianus Iunius' [1585])。この例では、プロンプターは、やはり台詞を忘れた俳優を助ける仕事だ。

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