オランダのフローニンゲン大学(University of Groningen)教授のSebastian Sobecki先生によるOUP Blog, 'Poaching with Piers Plowman'
とても興味深いので、ちょっと紹介する。私の誤読もあるかも知れないので、ご関心のある方は、正確にはブログ原文を読んでください。
教授は『農夫ピアズ』('Piers Plowman')の B text
と1381年の大反乱(ワット・タイラーの乱)の叛徒たちとの関連を当時の文書で裏付ける。英語英文学の研究者には周知のとおり、中英語文学の傑作『農夫ピアズ』には、大きく分けて3つのバージョン(A,
B, C texts)がある。その3つのバージョンのうち、初期(c. 1967-70)に書かれ、もっとも短い A text
は1381年のケント州の叛徒の間で知られており、大反乱の指導者の一人 John Ball
はこの作品に言及している。しかし、最も長く、自己検閲もされてない B text (c.
1977-79)と叛徒たちの関係は証明されてなかった。Sobecki教授の調査によると、1381年の反乱の少し前、ノーフォークのシェリフであったRichard
Holdychは、地元民と激しく対立していたらしい。その頃彼が王立民事裁判所(The Court of Common
Pleas)に提出した訴訟文書で、'William
Longwille’という名前の密猟者(poacher)が出てくるそうだ。この名前は『農夫ピアズ』の作者名として通常使われている
'William Langland'
によく似た名前だが、大反乱の叛徒たちが触れている名前でもある。しかし、この作者と目されている人物の名前は『農夫ピアズ』の A text
には書かれておらず、B text になって登場する。つまり、B text の15節にこのように作者が自分の名前を名乗る場面がある:
“ ‘I have lived in the land’, said I, ‘my name is Long Will’ ” (Passus 15, line 152)
この行の単語のうち、land, long, willを組み合わせて、逆から読むと、Will Langland。Will は
William のことなので、「ウィリアム・ラングランド」となるわけ。しかも、そのまま左から右へ読むと、最後は、Long Will
という先程の法律文書に出てくる密猟者と同じ名前だ。だからと言って、この名前を使ったノーフォークの密猟者やあるいはその後の名前の使用者が『農夫ピアズ』の作者とは必ずしも言えないが、これらの反乱者は、『農夫ピアズ』の
B text を読んでいた可能性が高いとは言えるだろう。
このブログはSobecki教授が今年、OUP の学術誌、Review of English Studies に発表した論文('Hares,
Rabbits, Pheasants: Piers Plowman and William Longewille, a Norfolk
Rebel in
1381')を短くまとめた文章のようだ。この基になっているRESの論文が今オープン・アクセスで読める(リンクはブログの最下部に付いています)。
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