2018/02/07

NHK ETV特集「長すぎた入院:精神医療・知られざる実態」

2月5日、月曜に放送されたNHK ETV特集「長すぎた入院:精神医療・知られざる実態」を見た。

福島第一の原発事故の為に周辺にあった5つの病院から多数の患者が他の病院に移された。その結果、それらの患者の多く、いや大多数が最早入院の必要のない人だと分かった。そうした患者を一時的に受け入れて診断し、入院の必要のない人は社会に戻す手助けをしている矢吹病院の医師によると、受け入れた40人のうち、入院治療の必要な患者はたったの2人、つまり5パーセントに過ぎないという。多くの患者は数十年入院を強いられたまま、つまり社会的入院という監獄に入れられた状態で人生を終えつつある中高年の収容者である。番組が追う元患者「時男」さんも、青年期に統合失調症で入院し、その後症状は改善し、今は普通の人以上に普通の健康な精神を持つ大変真面目な性格の人のようだが、根強い差別の中で、家族からも見放され、受け入れる人も場所もないまま、原発事故で退院のきっかけをつかむまで、39年間もの間放っておかれた。「自分にとっては、原発事故があって本当に良かった」、と彼は言う。出たい、自由になりたい、と思い続けてきた彼は、まさに袴田さんのようなえん罪被害者と同じ。矢吹病院にやってきた長期入院者の中には、夫が酒乱で入院し、それと一緒に何の精神病も患ってない妻まで入院させられ、そのまま無実の囚人のように閉じ込められた女性も含まれていた(彼女には軽い知的障害があり、自分を守ることが出来なかったのである)。日本は、北朝鮮を笑えない収容所列島である。これらの患者を収容していた病院は、事実上、患者を食いものにして経営されていたわけだし、こういう状態を日本の精神医療の関係者や厚労省は放置してきたわけだ。「時男」さんが若い頃彼を診察していた一人の医師が言うには、当時時男さんが居た病院は、患者200人に対し、医師は一人だけという状態だったそうである。また、地域の差別の中で家族も退院を望むのをためらう。長期入院者の家族にとっては、精神病院は謂わば大昔の座敷牢と化していた。
「普通」から外れ、少数者になると、どこまでも差別され、人間扱いされなくなるのが日本の社会。この国は本当に恐ろしいと、道行く「普通の」人々を見て思う。
原発事故で幸いにも外に出られた時男さんのような人の背後には、日本中で数万人、十数万人の長期入院者がいる。その人達の多くは、おそらく入院の必要のない、謂わば囚人なのだろう。番組で紹介されたデータでは、日本には世界の精神科病床のおよそ2割が集中、平均の入院日数は、他の先進国の精神病院では28日、日本ではその約10倍の270日。日本の精神病院に1年以上入院している人18万人、5年以上の人も1万人いるそうだ。

何故我々日本人はこれほどまでに冷たくなれるんだろう。親切な人も沢山いるのに・・・。私にはよく分からない。背筋が冷たくなる番組だった。

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