2012/05/12

『ロビンソン・クルーソー』を知らない時代


あるところで20歳前後の大学生60〜70人に近代英文学について話している。私の専門ではないので、極めて初歩的な話しかできない。何十年も前の学生時代の読書に基づいた話で、おそるおそるといったところだ。潰されかねないような英文科で働いていると、専門なんか関係なくTOEIC講座でも現代文学でも英語史でも、言われたものは何でもやらなきゃならん、という癖というか変なモラル(笑)というか、そういう考えが身に染みついてしまっているもので。しかし、貧しい知識しかないのに無責任と言えば言えるなあ。

その講義で先日、ダニエル・デフォーについて触れた。『ロビンソン・クルーソー』くらい、イギリス植民地主義とか、プロテスタンティズムと労働倫理を説明するのにわかりやすい教科書(?)はない。その際、『ロビンソン・クルーソー』を、子供向きに書かれた話でもアニメや絵本や漫画でも、とにかく読んだり見たりしたことがある人?、と聞いたら、手を挙げたのは1人だった。1割くらいはいるかなと安易に思っていたのだが、私もずれてたねえ・・・。私の話を聞くベースが欠けているようなので、今までよりももっと基本的な事から話さないと。私の世代だと、特に本が好きな子でなくても、少年少女文学全集の1冊とか、童話版や絵本なんかでたいてい接しているのではないかと思うが、今の若者の多くは名前も聞いたことがないのだろうね。まあ、デフォーというのが特殊なのかも知れない。『ロビンソン』はフランス語版の映画があるのは知っているが、有名な映画はないと思う。冒険小説的な興味で男の子には面白くても、女の子の興味を引きにくいかもしれない。『ロビンソン』を読んでないと、『蝿の王』なども読者としての前提に欠けることになるなあ。同じ時代でも『ガリバー旅行記』だったらどうだろうか?次回、思い出したら同じ人達に聞いてみよう。

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