2012/05/18

犬とドラゴンの浮き彫り(中世のカンタベリーから)

前回のポストに関連して、4枚の写真を載せておく。どれもカンタベリー歴史博物館 (Canterbury Heritage Museum) で今年の3月8日に撮ったもの。市内のChurch Laneという通りで発見されたという4枚の石板に掘られた浮き彫り。博物館の説明書きによると、1080-90年頃の制作で、元々はカンタベリー大聖堂にあって、その後、おそらく宗教改革の時期、偶像崇拝排斥の為に大聖堂から取り除かれたと推測されているようだ。ノルマン・コンクエストを描いたバイユー・タペストリーにも似たような図柄があるとも書いてあった。ちなみに、バイユー・タペストリー自体、学者によっては1967-82年頃にカンタベリーで制作されたという説もあるとのことだから、直接の影響関係があった可能性もある(注)。

さて、最初の2枚は犬。頭は右上にあり、自分の尻尾を追いかけている図のようだ。図柄は似ているが、違う石版。



次は2匹の怪物が向き合っている場面と思う。左側の怪物は羽根がついているのだろうか。


最後は羽根を持ち、直立しているドラゴン。なかなか見応えある彫り物だ。昔の東映の怪獣映画を思い出した。キングギドラとか(^_^)。左上にあるのが頭と思う。


私自身も中世の怪物についての洋書も持っているので、そのうち読んで見なくちゃとは思っているが・・・。論文が終わってからかな。

(注)バイユー・タペストリーは、かってはウィリアム征服王の妃マチルダが作らせたと考えられていたようだが、今の定説は、征服王の父親違いの兄弟、オドン (Odo) が作らせたとの説が最有力らしい。オドンはバイユーの司教であり、征服後はケント伯 (Earl of Kent)となった。ウィリアムがイングランドに居ない間は、王に変わって政治を行う程の有力者であったそうだ。いずれにせよ、この織物が作られたのはイングランドであり、アングロ・サクソン人の職人によるらしい。このオドンという人物、Wikipedia英語版に見出しが作られていてざっと読んでみたが、なかなか面白い。バイユーの司教だったが、何よりも武将として名を馳せたようで、ノルマン・コンクエストで活躍し、その後も、反乱を企てて長い間投獄されたりしている。最後は十字軍に行く途上、パレルモで亡くなっている。



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