2009/11/24

BBC Drama, "Little Dorrit" (DVD)


BBC Drama, "Little Dorrit" (2008, DVD)

2008年に放送されたBBCのコスチューム・ドラマ(時代劇)、"Little Dorrit"のDVD版。原作はチャールズ・ディケンズ。全14回の長丁場。但、基本的に30分で、最初と最後の回だけ1時間なので、全部で8時間。出演は、

Matthew Macfadyen (Arthur Clennam)
Claire Foy (Amy Dorrit)
Tom Courtenay (William Dorrit, Amy's father)
Judy Parfitt (Mrs Clennam, Arthur's mother)
Andy Serkins (Rigaud, also called Blandois)
Eddie Marsan (Mr Pancks, a rent collector)
Emma Pierson (Fanny Dorrit, Amy's elder sister, a music hall singer / dancer)
Anton Lesser (Mr Merdle)
Amanda Redman (Mrs Merdle)
Alun Armstrong (Jeremiah Flintwinch, Mrs Clennam's servant)
Sue Johnson (Affery Flintwinch, Jeremiah's wife)
Ron Cook (Mr Chivery, a gatekeeper of Marshalsea Prison)
Russell Tovey (John Chivery, son of Mr Chivery, also a gatekeeper of Marshalsea)
Ruth Jones (Flora Finching, the former sweetheart of Arthur Clennam)
その他大勢出演

スタッフは、脚本:Andrew Davis、演出:Dearbhla Walsh, Adam Smith, Diarmuid Lawrence(長いので複数の人で演出するんですね)。

日本の大河ドラマほど長くはないが、BBCが大変力を入れ、多額の予算をかけて作ったに違いない大作。出演者も豪華だし、Marshalsea Prisonのセットなども、BBCの歴史ドラマはいつもそうだが、大変良くできている。

19世紀のイギリスでは、借金を返せない債務者の為の特別の監獄があった。それがMarshalsea Prison。ディケンズの父親もそこに入っており、彼は子供時代の一部をそこで過ごした。この作品の主人公、Amy Dorritは、このMarshalseaで生まれ、そこで育った、月並みな表現で言うなら、薄幸の少女。しかし、毎日年老いた父親をけなげに世話し、かつ、Mrs CLennamやMrs Merdleなどのお金持ちの家に出入りして裁縫をするなどして働いている(彼女自身は囚人ではないので、自由に監獄を出入りできる)。その彼女の前に、親切な若い紳士Arthur Clennamが現れる。彼はアジアで父親と共に長年ビジネスに携わってきたが、近頃帰国したばかり。父は向こうで亡くなったが、亡くなる前に、むかし彼がしたらしいひどいことの償いをしてほしいと、イギリスに残っていたMrs Clennamに伝えるよう息子に言い残した。この昔の汚点が、どうもDorrit家の貧困と何か関係がありそうだ、と気づいたAruthur Clennamは、自分が何か償いが出来るかも知れないと思ってDorrit家の人々に近づき、借金取りのPancksの助けを借りて彼らの貧困の原因を探り始めると、あれこれ思わぬ事が分かってくる・・・。Dorrit家の運命の変転に伴い、彼ら自身も周りの人々も大きな変貌を遂げる。

こういうドラマは「絵」を見ているだけで結構楽しい。加えて、私の最も好きな2枚目俳優、Matthew Macfadyenが出るとなれば尚更。彼はもう若くはなくなったが、スターにしては、実にすがすがしい雰囲気を持っていて貴重だ。Tom CourtneyやAnton Lesserなど大ベテランも出演している。特に、世をすね、ひがみにひがんで意固地になっているけれど、プライドだけはやけに高いWilliam Dorritを、Tom Courtneyが実に上手に、嫌らしく演じている。その他のキャラクターもディケンズらしく皆とても個性的で、楽しい。特に面白く見たのは、借金取りのMr Pancks (Eddie Marsan)。『不思議の国のアリス』から迷い出たみたいな、突拍子もない、騒々しいキャラクターだが、心の中には純粋なものを持っていて、愛すべき人物。Amy Dorritを甲斐なく慕い続け、最後には恋仇のArthurを助けまでするJohn Chivery (Russell Tovey)もかわいい好男子。Amyの属っぽくて気取ったお姉さんのFannyも楽しい人物 (Emma Pierson)。Arthur Clennamの昔の恋人だったが、今やとても不格好で騒々しい未亡人になっているFlora Finching (Ruth Jones) も、個性たっぷり。

主役のAmy Dorritを演じるClaire Foyは、他では見たことのない、新人と言ってもよい役者。映画やドラマの主役としては、かなり地味な雰囲気の人。イギリスの街角を歩いていれば、直ぐ出会いそうな、近所の女性、という感じ。例えばKeira Knightleyのような美人でもなく、華やかさもない。しかし、監獄に住む少女の役にはぴったりだ。

物語の大きな展開を導くのは、19世紀の金融の大混乱。金融に政府や国際機関による規制のなかった時代、国内外の資金の予測できない動きや、いかがわしい投資が、国の経済を揺るがし、人々の暮らしを脅かすことが度々あったのが、この作品でよく分かる。Clennamが彼の友人Daniel Doyceの発明を使って始めた会社が成功する。彼は有力者のお墨付きを信じて行った投資に大失敗して破綻するが、パートナーのDoyceがロシアで行った事業の大成功によって二人の会社は救われる。産業革命が進行する時代の、慌ただしい経済の動きを象徴している。

長いドラマだが、最後までじっくり楽しめた。30分の部分は、やはり1時間ずつ2回まとめて見た方が楽しい。


4 件のコメント:

  1. 来年の日本でのオンエアーが待ち遠しいです!
    RON COOKも出演しているんですね!
    ますます楽しみです。

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  2. コメントありがとうございました(Bill Nighyについても)。このドラマ、大変地味ですが、じっくり楽しめます。役者が実にたくさん出てきて、彼らを見ているだけで楽しいです。Yoshi

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  3. 初めまして。
    わたしもBBC制作ドラマの大ファンです。
    きょうはたまたまLaLa TVでこの作品を放映しているのを知り、さっそく第1話を視聴したところです。
    早くも、しっかり心をつかまれまして、次回が楽しみです。
    前に小説を読んでいて、債務者用の監獄があるというのを知り、以来、興味をもっていました。マーシャルシー・プリズンのセットには感激です。19世紀のロンドンをぐんと身近に感じさせるドラマですね。

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  4. Shim-kさま、ご訪問ありがとうございます。コメントがあるのに気づいて良かったです。このドラマ、良くできていますね。イギリスでも結構評判良かったと思います。芸達者ばかりですし。BBCは当分ディケンズとかオースティンとかやらないと言っているみたいなので、貴重です。私はMatthew Macfadyenが主役と言うだけで大満足。それにしても、NHKあたりでやって、もっと広い市庁舎に見て貰いたいですねえ。やはり地味ですし、我がMatthew君も日本ではほとんど知られてないですからねえ・・・。

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