2009/11/23

Poliakoffの新作映画、"Glorious 39"の情報


前項でBill Nighyについて触れたので、彼の出る新しい映画についても書く。私が過去見たテレビドラマの中で最も印象に残っているもののひとつにStephen Poliakoffの"Perfect Strangers"がある。ある一族の人々が自分達の過去の記憶をたどるのを描きながら、個人の歴史と国や世界の大きな歴史の交錯を見せてくれる大変繊細でありながらスケールの大きな作品。Claire SkinnerとMatthew Macfadyenのまぶしいように美しいカップル、Michael Gambon, Toby Stephens, Lindsey Duncanなど豪華な出演者で、堪能させる。そのPoliakoffの久しぶりの映画作品、"Glorious 39"がこの週末ロンドンで封切られたそうで、BBCのAndrew Marr Showで、GalaiとPoliakoffがゲスト出演して、紹介していた。イギリス資本による純粋のイギリス映画。出演は、Bill Nighy, Romola Galai, Eddie Redmayne, Julie Christie。


時と場面は1939年のイギリスの貴族の館。第2次世界大戦の直前だ。イギリスの首相ネビル・チェンバレンのナチス・ドイツに対する宥和政策(Appeasement)を支持する貴族の話らしい。スリラーとして、お話も面白くできているようだし、セッティングは美しい貴族の館で、エンターティメント性は高い。しかし、内容は非常にシリアスな点もあるようだ。Poliakoffは父方がロシア系ユダヤ人の血筋であり、こういう題材には非常に鋭い感覚を持っていると思う。


PoliakoffはNighyを大変高く評価していて、この作品を書いている時から彼を主役に起用するつもりであったとのこと。Romora Galaiは最近立て続けに良い役を射止めており、舞台だけではなく、映画やテレビでも大活躍。Keira Knightlyの次の大スターになりつつあるというような事をAndrew Marrも言っていた。それ程美人でもないが、演技力が評価されているのだろう。私も"Emma"を見て感心した。彼女は父方の家系はハンガリー系ユダヤ人で、その点で、この作品の歴史的背景やPoliakoffを他の人より良く理解出来るかも知れない。


戦前のイギリスの上流階級は、共産主義に非常に恐怖を感じていた。その一方で、ナチスのような全体主義には寛容であった。またユダヤ人の迫害などは差して気にしてはいなかったことなどが背景にあるそうだ。更に当時のイギリスの諜報機関がかなり出てくるようだが、これは日本の特高とまではいかなくても、超法規的な諜報活動を展開し、個人の迫害、精神的、物理的暴力の使用なども辞せず、恐るべき組織だったようである。


以上、間接的情報ばかり。本編はもしかしたらイギリスで見るかも知れないが、見られなければそのうちDVDで見てみたい。


(追記)上記を書いた後、リビューを2,3、読んで見たが、あまり好評とは言えないようだ。美しい映像らしいが、今ひとつ盛り上がりに欠けるようだ。ただ、映画の批評というのは、批評する人に色々な視点があって、劇評以上に鵜呑みに出来ない気がする。Poliakoffの作風が大好きな私にとっては、やはり一見の価値がありそうだ。

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