2010/02/21

"Measure for Measure" (Almeida Theatre, 2010.2.20)

問題劇として、正統派の演出で楽しめる
"Measure for Measure" (Almeida Theatre, 2010.2.20, 19:30- 22:10)


Direction: Michael Attenborough
Scenario: William Shakespeare

Design: Lez Brotherston
Lighting: David Hersey
Music: Stephen Warbeck
Sound: John Leonard
Movement: Imogen Knight

Cast:
Rory Kinnear (Angelo)
Anna Maxwell Martin (Isabella)
Ben Miles (Vincentio, The Duke)
Emun Elliot (Claudio, Isabella’s brother)
Daisy Boulton (Juliet, Claudio’s lover)
Lloyd Hutchinson (Lucio)
David Annen (Provost)
David Killick (Escalus, the duke’s deputy) 
Trevor Cooper (Pompey, a pimp)

☆☆☆☆/5

シェイクスピアの戯曲の中では問題劇(problem plays)と呼ばれる作品のひとつ。主役のAngeloは都市を留守にするDuke(Ben Miles)に代わって、町を治め、裁判官をすることになる。法を非常に厳しく適用し、罪人に厳格に処罰を科すため、未婚で女性を妊娠させたClaudioも死罪とする。しかし、そのClaudio(Emum Elliot)への慈悲を請いに来たIsabella(Anna Maxwell Martin)の魅力に引きつけられ、彼女が彼に身を任せれば兄弟を許すと言って、職権を乱用して脅迫。それらを、修道士の衣で身を隠して全て目撃していたDukeは、色々な手を尽くして丸く収めようとするが・・・。「問題劇」といういわれは、最後がどうも丸く収まったような(ハッピーエンドのような)、そうではないような不消化な終わり方をするからだろう。しかし、その複雑さ、人間の行動の善悪に割り切れないところが、この劇の複雑な魅力である。

イギリスでも上演されることは多くなくて、私もきっと昔見たことがあるとは思うのだが・・・思い出せない。しかし、BBCのテレビドラマでは見た記憶あり。今回の公演は、現代服ではあるが、後はオーソドックスな演出だと思った。しかし、problem playのproblemたるところを最大限に引き出しているようだ。最後のシーンは本で台詞だけ読むと、19世紀のイギリス小説みたいに、Dukeが彼の権力で無理矢理丸く収めたという感じで、ちょっと陰のあるハッピーエンドという感じだが、この公演では、Dukeが皆も自分も幸せにしようとしたけれども、Duke自身も含めて、やはり上手くは行かなかった、という顔をして沈黙が重苦しくその場を支配したまま劇が終わる。Claudioの愛人だったJulietも最後にしかめ面をして立っていて、「私はどうなってしまうのよ」とでも言いたげだ。Dukeは中央の玉座に当惑したような顔で座っていた。

Roy Kinnearが上手い!特に内省的な台詞になると、とてもふくらみのある表現が出来る人で、その点ではサイモン・ラッセル=ビールを思い出させる。Anna Maxwell Martinは、元来Isabellaが持つ頑なな潔癖さと弟への思いの間で悩む内面をよく伝えていた。Ben MilesのDukeは、この二人に比べると、やや教科書的な台詞運びで、単調だったかも知れない。他では、道化的な役割のLucioを演じたLloyd Hutchinsonが聞いていて楽しかった。Donmar West Endの”Twelfth Night”でも道化をやった人だ。

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2 件のコメント:

  1. こんにちは。この劇は私が劇場で見た数少ない英語劇の一つです。新大久保のグローブ座ができて間もない頃、イギリスの劇団の公演があったので、前もってテキストを暗記するくらい(ウソで~す)読んで行きました。劇団名は記憶にないのですが、この公演もやはり衣装は現代のものでした。台詞は原文に忠実なのに、テキストから受けたのとはまったく異なる印象の劇になっていて(Yoshiさんのごらんになったのと同じ感じ)、演出の面白さに感動しました。残念ながらその後は演劇というものにはほとんど縁のない日々ですが。

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  2. nishinayuu様、コメントありがとうございます。グローブ座は、経営が行き詰まって所有者が替わる前は素晴らしい劇場でした。当時が懐かしいです。あの素晴らしい空間も、今は若者向けコメディーなどにしか使われていないようですが、残念でなりません。nishinayuuさんが行かれた頃は、バブルの最中だったかも知れませんね。補助金も沢山あり、イギリスの有名劇団が毎年何度も日本に来てシェイクスピアなどをやっていました。特にグローブ座、そしてセゾン劇場がその中心でした。ケネス・ブラナーやイアン・マッケランが東京のステージで生で見られたなんて。今となっては夢の世界です。

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